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アイススケートリンクの設営から撤去まで

代々木競技場第一体育館は、一年のほとんどの期間、スポーツ競技大会やコンサート会場等に利用されていますが、時に競技フロアに氷を張り、スケートリンクとして大会が行われることを、来場された方が不思議がられていることがあるので、昨年12月に行われた、フィギュアスケート・グランプリファイナル2009のリンク造り(設営)を紹介します。

リンク設営を行ったのは㈱パティネ商会で、同社の取締役佐藤洋二氏に、この時の設営・解体・撤去までの様子や、短期間で行う作業上の工夫などについて、お聞きしました。

リンク設営について~(株)パティネ商会 取締役 佐藤 洋二 氏

今回、この記事に協力していただいた㈱パティネ商会は、創業47年。代々木競技場を始め、全国100を超えるリンクの建設を手がけてきました。あらゆる場所にリンクを設置できる冷却システムの高い技術もあり、ザンボニーの性能も数十年の間にアップした現代は、かつてよりは楽に氷を管理することも可能になってきてはいるが、最後にはどうしても人の手と経験から来る勘が氷の質を決めるとのコメントをいただきました。

設営

防水用シート1層目を敷き込む
防水用シート1層目を敷き込む

断熱材2層を敷き込む
断熱材2層を敷き込む

コンパネを敷き込む
コンパネを敷き込む

防水用シート2層目を敷き込む
防水用シート2層目を敷き込む

冷却管敷設
冷却管敷設

冷却管とメイン配管を接続しブライン液を通水
冷却管とメイン配管を接続しブライン液を通水

フェンス組み立て(コーナー部分)
フェンス組み立て(コーナー部分)

散水作業(結氷)
散水作業(結氷)

スケートリンク完成
スケートリンク完成

解体

フェンス解体・場外搬出
フェンス解体・場外搬出

館外に給湯器を設置(温ブライン用)
館外に給湯器を設置(温ブライン用)

氷を融解し排水、砕氷
氷を融解し排水、砕氷

冷却管巻取り
冷却管巻取り

搬出資材、館外設備すべてを撤収
搬出資材、館外設備すべてを撤収

場内清掃
場内清掃

当社が行った作業は、主に3頁のとおりでした。
体育館の床は木造床で、その上に幅30m・長さ60m=1800㎡のスケートリンクを造ることでしたが、床にダメージを与えない工夫、つまり、融水漏れや結露の防止、重量を部分に集中させない荷重分散など、万全を期す必要がありました。同時に、競技会前後の工事も最短時間で行う必要があり、これは時間との競争です。

どのように効率よく、最短時間で行ったのかを説明しますと、リンク組み立てに必要な資材・機器の制作や加工は、工場で行って現場に搬入します。現場では、これらを所定位置に置く、並べる、接続する、といった作業だけで、この作業をエキスパートで行います。

社員(共同事業会社の㈱レジャーインダストリーを含める)は、スケートに関してエキスパートの集団になります。普段は、それぞれ全国各地の事業場で仕事をしていますが、高度な工事を行うような時に各地から全員集合して、多勢で一斉に、突貫工事で遂行することが可能です。

館内・館外工事

代々木競技場第一体育館では初日、60名集合で作業にかかりました。班を館内と館外の2チームに分けました。
館内工事は、幅34m・長さ64mの寸法

  1. 床養生に、防水用シート(T0.35mm)敷設
  2. 結露防止と防熱に、断熱材(T40mm)を2段重ねて設置
  3. 荷重分散と床補強にパネル(T24mm)を敷設
  4. 水溜に、防水用シート(T0.35mm)を敷設
  5. 冷却管(EVA樹脂管径9mm管が48管一体成型)を60セット設置
  6. リンクサイドにメイン配管設置後、冷却管のサブッダーを接続
  7. リンクフェンスの設置

という作業を行い、館内工事終了。所要時間は15時間でした。

館外工事は、

  1. 冷凍機4台、ブラインタンク1基、動力制御盤1基、ポンプ5台、400KVA発電機2台、150KVA発電機1台からなる、冷凍設備の設置
  2. ブラインタンクとリンクのメイン管を連絡する配管設置と連結

以上の工程で、館外工事は館内と同時終了しました。工事開始16時間後、氷づくりの散水を始めました。

氷の形成と維持管理

氷づくりは、氷厚8cmに積み上げるまで5日間、昼夜120時間かけて行いました。1回に0.3~0.5mm程度、1cmの厚さ氷をつくるのに30分に1回の散水を約20回、という細やかな作業を経ています。こうしてつくった氷は固くて強度があり、きめも細かい。滑走によって削れる氷片は細かく、選手たちのエッジもスムーズに滑る。この氷により、一流のスケータたちのスケーティングの美しさも映えるのだと自負します。

氷厚が8cmになったとき、真下の床には約100kgの荷重がかかっています。氷面にザンボニー(整氷車)を走行させるとき、従来使用のザンボニー(M-500)の重量は、タンクが空の状態で3t、削雪を満載したとき4tで、タイヤ1本当たり1tの重量が加わると、床にとって好ましくありません。

このような観点から、今回のリンク設営ではザンボニーを小型軽量(M-100)に変えて使用させてもらいました。本体重量は712kg、削雪満載時で800kg、タイヤ1本当たり約200kgの荷重で、床のダメージにはならないと判断したものです。

解体

  1. フェンスを解体・搬出
  2. 館外に給湯設備を10台設置。冷却用に使用した冷ブラインをプラス17℃に加温してリンク冷却管に循環させる。これによって、氷面の融解が始まる
  3. 融氷水をポンプで排水溝に排水。融氷・排水を終了後、却管内のブラインを回収
  4. 冷却管を巻取り・搬出
  5. 次いで上層から、防水シート、コンパネ、断熱材、下地の防水シートを解体・搬出
  6. 館内から搬出の資材、館外に設置の冷凍設備すべてを撤収・搬送

 

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