このページにある解説は、「スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>」掲載の補足説明をもとに、スポーツ庁の監修を受けて作成しております。
原則1 法令等に基づき適切な団体運営及び事業運営を行うべきである。
(1) 法人格を有する団体は、団体に適用される法令を遵守しているか。
・法人格を有する団体については、その法人に適用される法令を遵守することが求められる。一般社団法人及び一般財団法人については一般社団法人及び一般財団法人に関する法律、公益社団法人及び公益財団法人については公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、特定非営利活動法人(NPO 法人)については特定非営利活動促進法の遵守がそれぞれ求められる。
(2) 法人格を有しない団体は、団体としての実体を備え、団体の規約等を遵守しているか。
・法人格を有しない一般スポーツ団体において、団体内部の規約等を定めている場合には、当該規約等を遵守し、適正に団体運営を行うことが求められる。
・法人格を有しないとしても、団体としての権利義務関係を明確化する観点から、以下の点に取り組むことが求められる。
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団体としての組織を備え、多数決の原理が行われ、構成員の変更があったとしても団体が存続し、代表の決定方法や財産の管理等の団体としての主要な事項を確定させること
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個人の私的な口座で財産の管理・運営を行うのではなく、団体活動のための専用の口座を用い、財産を分別して管理・運営すること
なお、権利義務関係を明確化し、適正なガバナンスを確保する観点から、少なくとも公的助成を受給する団体においては、可能な限り早期に法人格の取得に取り組むことが求められる。
(3) 事業運営に当たって適用される法令等を遵守しているか。
・一般スポーツ団体においては、法人格を規定する法令以外にも、自らの事業運営において適用される関係法令、地方公共団体が定める各種条例や規則等を把握し、遵守することが求められる。例えば、一般スポーツ団体が公共施設を使用して競技大会やイベントを開催する場合における当該施設の使用に係る規則や、地方公共団体が定める安全管理に関する条例等が想定される。
(4) 適切な団体運営及び事業運営を確保するための役員等の体制を整備しているか。
・一般スポーツ団体における適正なガバナンスの確保を図る上で、団体運営及び事業運営に関する重要な意思決定を行う役員等がその権限を適切に行使するとともに、その権限の行使について、適切な監督が行われることが重要である。
・具体的には、法人格を有する一般スポーツ団体においては、理事会、社員総会、評議員会等における計算書類及び事業報告の承認手続や、監事、会計監査人による監査等を通じて、また、法人格を有しない一般スポーツ団体においても、役員等から構成員その他のステークホルダーに対して業務執行状況を報告する機会を設けることなどを通じて、団体運営及び事業運営について適切な監督が行われることが求められる。
*法人格を有しない一般スポーツ団体において、団体運営及び事業運営に対する監督が行われるようにするための取組の例
・決算や事業報告等を行う会議を、団体の構成員が聴講できるかたちで開催している
・会報等を通して定期的に運営状況を団体の構成員に報告している
・なお、多くの 中央競技団体の地方組織(都道府県の協会、連盟等。以下同じ。)は、地方競技大会の開催、国民体育大会に係る選手選考や強化活動、指導者・審判員の育成、指導者等に対する懲罰制度の運用など、当該地方における対象スポーツに関する各種業務を担っており、中央競技団体に準じる公共性の高い団体であると認められる。このため、中央競技団体の地方組織は、ガバナンスコード<中央競技団体向け>の原則2を参照しつつ、役員等の多様性及び理事会の実効性の確保、役員等の新陳代謝を図る仕組みの構築等に取り組むことが望まれる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>、7~8頁をもとに作成。
原則2 組織運営に関する目指すべき基本方針を策定し公表すべきである。
(1) 組織運営に関する目指すべき基本方針を策定し公表しているか。
・一般スポーツ団体がステークホルダーの理解を得つつ、安定的かつ持続的な組織運営を実現するためには、組織として目指すべき基本方針(ミッション、ビジョン 等)を策定し、公表することが求められる。
・その策定に当たっては、組織運営に関わる一部の者のみで作業するのではなく、当該一般スポーツ団体の活動に関わる多様なステークホルダーと対話し、それらの意見を反映させることが望まれる。
・目指すべき基本方針の公表方法については、各一般スポーツ団体のウェブサイト等で行うことが望まれる。また、ウェブサイト等を有していない一般スポーツ団体においては、上部団体等のウェブサイト等を利用して開示することが望まれる。
・なお、公的助成を受給するなど一定の人的・財政的規模を有すると認められる団体においては、目指すべき基本方針のみならず、中長期的な目標並びにその達成を確保するための中長期基本計画及び財務の健全性確保のための計画を策定し、公表することが望まれる。その際、中長期基本計画は、目標達成のための課題を抽出し、その解決のための方策及び実行計画を盛り込むとともに、計画・実施・検証・見直しのプロセス(PDCA サイクル)を実践可能なものとすることが望まれる。また、財務の健全性確保のための計画については、中長期的な視点から明確かつ測定可能な目標を記載した計画を策定するとともに、当該計画に基づき会計年度ごとの詳細な計画を策定することが望まれる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>、7頁をもとに作成。
原則3 暴力行為の根絶等に向けたコンプライアンス意識の徹底を図るべきである。
・コンプライアンスの実践は、単なる法令遵守にとどまらず、組織や業界において定められる様々な規範、さらには社会規範の遵守を含むものであり、一般スポーツ団体が多様なステークホルダーや国民・社会からの信頼を得て、安定的かつ持続的に組織運営を行う上での前提条件又は組織統治の基盤になるものである。
・ひとたびコンプライアンス違反事案が発生すると、組織に対する社会的信用を失墜させ、ひいてはスポーツへの社会的評価を低下させることにつながりかねない。一般スポーツ団体が組織として存続する限り、常にコンプライアンスが実践されている又はコンプライアンス違反が生じていない状態が保持されていることが必要である。そのためには、一般スポーツ団体に関わる全ての者がコンプライアンスに係る知識を身に付けるとともに、コンプライアンス意識を徹底することが不可欠である。
・コンプライアンス教育に関しては、一過性の取組ではなく、一般スポーツ団体自らが定期的にコンプライアンス教育を実施すること、又は統括団体や中央競技団体、公的機関等が実施する研修・演会・セミナー等への定期的な参加を促すことが求められる。
・コンプライアンス教育の実施に当たっては、昨今、役職員又は指導者の暴力行為やセクハラ、パワハラ等が社会的な問題となっていることに鑑み、これらの行為が決して許されないことが徹底されるよう、暴力行為等の禁止について特に重点的に教育することが望まれる。
・なお、団体のコンプライアンスの基となる規程等についても、今日的なものとなっているか不断に見直し、適確に運用することが求められる。
*団体のコンプライアンスの基となる規程等の見直しについては、スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則10の補足説明をご参照ください。
(1) 役職員に対し、コンプライアンス教育を実施しているか、又はコンプライアンスに関する研修等への参加を促しているか。
・一般スポーツ団体が役職員に対してコンプライアンス教育を実施するに当たっては、例えば、以下のような内容を取り扱うことが考えられる。
- 暴力行為、セクハラ、パワハラについて
- 当該スポーツ団体に適用される関係法令及びガバナンスコードについて
- 不適切な経理処理を始めとする不正行為の防止について
- 大会運営、強化活動等における選手等の安全確保の徹底について
・1については、特に競技者に対して暴力行為等が行われない環境を整備する必要について理解を促すとともに、仮に競技者に対して暴力行為等が行われた場合に、競技者が身体の安全を確保すべく適切 な対処ができるように教育することが求められる。
・2については、特に、理事、監事、評議員等、組織の意思決定に関わる役員等が、当該スポーツ団体のガバナンス確保及びコンプライアンス強化における重要な職責を全うできるよう、それぞれの法令上の権限及び責任(理事会・評議員会・監事の権限、善管注意義務、問題発生時にとり得る法的手段等)について十分な理解が得られる内容とすることが望まれる。
(2) 指導者、競技者等に対し、コンプライアンス教育を実施しているか、又はコンプライアンスに関する研修等への参加を促しているか。
・指導者、競技者等向けのコンプライアンス教育を実施するに当たっては、例えば、以下の内容を取り扱うことが考えられる。
- 暴力行為、セクハラ、パワハラについて
- 人種、信条、性別、性的指向及び性自認、社会的身分等に基づく差別の禁止について
- SNSの適切な利用を含む交友関係(反社会的勢力との交際問題を含む。)、社会常識について
- 不正行為の防止について(ドーピング、八百長行為等)
- スポーツ事故防止及び事故発生時に関する安全管理について
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その他の違法行為について(20 歳未満の飲酒・喫煙、違法賭博、交通違反・事故等)
・コンプライアンス教育の企画・実施に当たっては、その類型や発生経緯の分析を行い、具体的な事例を取り上げるとともに、これらのコンプライアンス違反事案が指導者自身にもたらし得る重大な結果や関係者への多大な影響についても、十分に理解できるようにすることが望まれる。
・なお、例えば、身体接触を伴う対人競技において、指導者が競技者に対して必要以上の負荷をかけることが生じることや、障害者スポーツにおいて、指導者やサポートスタッフが競技者の競技面のみならず生活面も含めて様々な支援を行うという密接な関係性の中で、時として選手に対するハラスメントが発生することがあるなど、対象スポーツの競技特性や競技環境等を踏まえて、陥りやすいコンプライアンス違反事案を取り上げるなどの工夫をすることが望まれる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>、10~12頁をもとに作成。
原則4 公正かつ適切な会計処理を行うべきである。
・一般スポーツ団体の活動は多岐にわたり、その中には、公的資金に関する手続など、税務、会計等の専門的な内容を含むものも数多く存在する。
・特に一般スポーツ団体が公的助成を受給していたり、ステークホルダーからの登録料、協賛金、寄附金等の資金を受領して活動したりしている場合、それらの資金の使途については、高い公正性と透明性の保持が求められる。
・しかしながら、一般スポーツ団体において、公的助成の不正使用をはじめとする会計処理に関する不祥事は依然として発生していることから、一般に公正妥当と認められる会計の原則に則った会計処理 を確実に行うことの重要性は一層高まっている。
(1) 財務・経理の処理を適切に行い、公正な会計原則を遵守しているか。
・公正な会計原則を遵守するための業務サイクルを確立することが求められる。特に、理事等の経済的利益の透明性を確保するための規程、支出に関する領収書その他証憑の保存を徹底するための経費使用に関する規程及び財産の独立管理の徹底を図るための規程を団体内において明確に定めるとともに、その運用の浸透と定着を図り、また、定期的にその実効性を検証することが望まれる。
*理事等の経済的利益の透明性を確保するための規程の例
(スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則3(1)(2)補足説明より抜粋)
・役員等の報酬に関する規程
・役員等の退職手当に関する規程 等
*財産の独立管理に関する規程の例
(スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則3(1)(2)補足説明より抜粋)
・財産管理に関する規程
・寄附の受け入れに関する規程
・基金の取り扱いに関する規程 等
・理事等の役職員と監事との間における日常的な情報共有・連携体制の構築に重点的に取り組むことが望まれる。
(2) 国庫補助金等の利用に関し、適正な使用のために求められる法令、ガイドライン等を遵守しているか。
・公的助成の受給に当たっては、自らの団体が遵守義務を負う関係法令や公的助成の実施主体が定める実施要項、ガイドライン等の内容を十分に確認し、当該法令、ガイドライン等において遵守すべき事項が組織運営の業務プロセスにおいて適切に実行されるよう、財務会計方針、手続等の運用規程を定め、適確に運用することが求められる。
*公的助成の例
国や地方公共団体の補助金、スポーツ振興事業助成等の公的機関が実施する助成
(3) 会計処理を公正かつ適切に行うための実施体制を整備しているか。
・会計処理の内容について、団体内において複数の者がチェックする体制を整えるとともに、経理担当と監査担当は別の者が行うよう監査体制を明確にすることが求められる。
・必要に応じて税理士、公認会計士等による外部監査を導入することも有効であると考えられる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>、13~14頁をもとに作成。
原則5 法令に基づく情報開示を適切に行うとともに、組織運営に係る情報を積極的に開示することにより、組織運営の透明性の確保を図るべきである。
・法人格を有する一般スポーツ団体においては、貸借対照表等、法令に基づく情報開示を適切に行うことが求められる。また、法人格を有しない一般スポーツ団体においても、少なくとも年度ごとの収支報告について開示することが求められる。
・また、法人格の有無にかかわらず、以下のような情報について積極的に開示することが望まれる。
- 組織運営に重要な影響を及ぼし得る役職員の選任に関する情報
- 各団体のステークホルダーに重要な影響を及ぼし得る情報(例えば、選手選考を行っている団体においては選手選考に関する規程等が考えられる。)
- ステークホルダーに対する説明責任を果たす観点から開示することが適当と考えられる情報(例えば、団体の活動に当たって会費の徴収や寄附の募集等を行っている場合、これらの会計処理(使途等)の状況等が考えられる。)
組織運営に係る情報の積極的な開示を行っているか。
・組織運営の透明性を確保し、適正なガバナンスを実現するとともに、開かれた一般スポーツ団体としてステークホルダー及び国民・社会から信頼を得るためには、ガバナンスコードの遵守状況に関する情報についても積極的に開示することが求められる。
・開示の方法については、特段の理由がない限り、当該スポーツ団体のウェブサイト等での開示が望まれる。なお、ウェブサイトを有していない一般スポーツ団体においては、上部団体等のウェブサ イト等を利用して開示することが望まれる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>、15頁をもとに作成。
原則6 高いレベルのガバナンスの確保が求められると自ら判断する場合、ガバナンスコード<中央競技団体向け>の個別の規定についても、その遵守状況について自己説明及び公表を行うべきである。
・組織の人的・財政的規模や業務内容等に鑑み,社会的影響力が大きく,中央競技団体と同等の高いレベルのガバナンスを確保することが求められると自ら判断する一般スポーツ団体にあっては,ガバナンスコード<中央競技団体向け>の内,自らに適用することが必要と考える個別の規定についても,その遵守状況について自己説明及び公表を行うことが求められる。
・ガバナンスコード<中央競技団体向け>の個別の規定の適用の在り方については、各一般スポーツ団体が、自らの団体の公共性、組織の特徴や業務内容、ステークホルダーとの関係等を踏まえて判断するものとする。例えば、中央競技団体の地方組織において、中央競技団体が設ける通報制度や懲罰制度に倣って自らの制度を設けている場合に、当該制度の運用について、ガバナンスコード<中央競技団体向け>の原則 9(通報制度に関する原則)や原則 10(懲罰制度に関する原則)の各規定の遵守状況について 自己説明及び公表を行うことなどが考えられる。
・また、その際、ガバナンスコード<中央競技団体向け>の個別の規定そのものを適用するのではなく、個別の規定を参考にしつつ、独自の原則・規範を自ら定めることも考えられる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<一般スポーツ団体向け>、16頁から引用。
スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>原則10補足説明
・ 懲罰制度の適用対象となる禁止行為、処分対象者、処分の内容及び処分に至るまでの手続等を、規程において明確に定め、ウェブサイト等を通じて、恒常的に団体関係者等に周知徹底することが望まれる。団体外部の中立的かつ専門的な第三者により、懲罰制度が当該規程に従って適切に運用されているか否かの確認を定期的に受け、当該第三者の助言指導を踏まえて定期的に運用を見直すことが望まれる。
・ 処分内容の決定は、行為の態様、結果の重大性、経緯、過去の同種事例における処分内容、情状等を踏まえて、平等かつ適正になされることが望まれる。規程において、あらかじめ明確かつ具体的な処分基準を定め、処分内容の決定に当たっては原則として当該基準に従うことが望まれる。
・ 調査機関の構成員又は同機関において指定した者(当該事案に何らかの形で関与したことがある者を除く。)による調査結果等を踏まえ、有効かつ適切な証拠により認定された行為についてのみ、処分の対象とすることが望まれる。
・ 団体関係者等に対し、処分対象行為の調査に対する協力義務及び調査内容に関する守秘義務を課すことが望まれる。
・ 処分審査を行うに当たって、処分対象者に対し、処分対象行為について可能な限り書面を交付することが望まれる。
・ 処分審査を行うに当たって、処分対象者に対し、聴聞(意見聴取)の機会を設けることが求められる。
・ 処分結果は、処分対象者に対し、処分の内容、処分対象行為、処分の理由、不服申立手続の可否、その手続の期限等が記載された書面にて告知することが求められる。認定根拠となった証拠や処 分の手続の経過についても、可能な範囲で告知することが望まれる。
・ 処分対象者のプライバシーについても配慮した上で、処分結果の公表基準を定め、これに従って、公表の有無及び公表の内容を決定することが望まれる。
*スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体団体向け>、47~48頁から引用。
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