ブックタイトルHealth Management for Female Athletes

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概要

Health Management for Female Athletes

c.血流依存性拡張反応への影響一般的に女性ホルモンとよばれるエストロゲンやプロゲステロンは,乳腺や子宮に作用するイメージが強いかもしれませんが,エストロゲンやプロゲステロンの受容体は血管にも存在し,さまざまな調節機能を担っています.エストロゲンには血管をやわらかくする作用があります.動脈のやわらかさの指標として血流依存性血管拡張反応を測定する方法があります.この数値が5%未満になると血管内皮機能の低下が疑われます.つまり,動脈が硬くなって心血管系疾患のリスクが高まっている状態といえます.図61には,無月経と正常月経アスリートの血流依存性血管拡張反応の比較を示しました57).無月経アスリートは,血流依存性血管拡張反応が1.1%と正常月経アスリートの6.3%と比較して非常に低い値を示しています.ところが,無月経アスリートに対してそれぞれ治療や食事の改善などの介入を行ったところ,2年後には血流依存性血管拡張反応が改善しました.長期間,無月経のままでいると血管が硬くなり,心血管疾患のリスクが高まるおそれがありますが,きちんと無月経に対する治療を行うことによって血管のやわらかさを回復することができます.加齢とともに血管が硬くなり,血圧が高くなることはよく知られていますが,特に女性の場合には閉経後に急激に血圧が上昇します.将来の健康のためにも若いうちに正常な月経周期を保ち,血管が硬くならないように注意することが必要です.%12血流10依存8性血管6拡張反4応201.1p=0.01無月経群5.6ベースライン図61無月経および正常月経アスリートの血流依存性血管拡張反応の比較1016.38.0正常月経群2年後Hoch et al., WMJ, 2007