ブックタイトルHealth Management for Female Athletes
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Health Management for Female Athletes
e.関節の弛緩性月経周期と関節の弛緩性,特に膝の前十字靱帯との関連については,これまでさまざまな調査研究が行われてきました.これらの報告のほとんどが,エストロゲンやプロゲステロンのホルモンと関節の弛緩性について検討されたものであり,前十字靱帯損傷は月経周期の卵胞期に多いという報告や排卵直前に発生率が高いなどさまざまな報告がありますが,月経周期と関節の弛緩性については明らかになっていません32-34).近年,月経前の黄体期に,卵巣から分泌されるリラキシンというホルモンが前十字靱帯に作用し,関節の弛緩性に影響を与えることが報告されています35,36).また,前十字靱帯ではこのリラキシンの受容体は女性のみに存在し35),リラキシン-2が6pg/mL以上の場合に前十字靱帯損傷のリスクが4倍以上高いこと36)や,OC服用者ではリラキシンが低いことが報告されています37).しかし,このリラキシンは月経前の黄体期に全例で認められるホルモンではないことも報告されており,もともとリラキシン値が高値を示さない女性もいることから,OC服用がリラキシンを低下するかについても明らかになっていません.今回,我々は卵胞期72名,排卵期25名,黄体期57名,無月経13名,低用量ピル服用中16名の計183名のトップアスリートでリラキシン-2を測定した結果,黄体期のみでリラキシン-2が認められました(図30).また,黄体期にリラキシン-2を測定した57名中36名(63.2%)でリラキシン-2が認められ,リラキシン-2が6 pg/mL以上のアスリートは57名中21名(36.8%)でした.この21名中で5名低用量ピル服用を開始したところ,全例でリラキシン-2の低下を認めました.今回の我々の調査結果から,低用量ピル服用によりリラキシンが低下することが明らかとなりました(図31)38).月経前に関節が緩むことを訴え,婦人科を受診するアスリートがいます.これらのアスリートのように,月経前に関節の弛緩性が高いことを自覚しているアスリートや黄体期にリラキシンが高いアスリートでは,低用量ピル服用によりリラキシンが低下することで,前十字靱帯損傷をはじめとした障害予防に66