平成26年度 妊娠期、産前・産後期、子育て期におけるトレーニングサポートプログラム

妊娠期等のトレーニングサポートプログラムについては、NFや女性アスリートの要望がどの程度あるのか不明です。また、NTCには託児室が設置されていますが、通常の合宿地・大会会場ではそのような設備がなく、子どもを連れてトレーニングを行う環境が整っていないのが現状です。
本プログラムは、これから出産を考える女性アスリートの選択肢を広げることができるよう、出産後もアスリートとして活躍できる事例を増やすことを目的としています。

妊娠期におけるトレーニングサポートプログラム

事例の調査

実施内容

出産を経験した女性アスリート3名を対象に、妊娠期、産前・産後期に実施していたトレーニング内容、身体の変化の感じ方、必要性を感じたサポート内容などのニーズを調査するため、面談による事例調査を実施しました。
引退した選手には、出産後に現役を継続することを想定して回答していただきました。

得られた成果

実際に妊娠・出産を経験した女性アスリートの現状を把握することができました。
しかし、対象者が少なく、妊娠期、産前・産後期の実態を把握できるまでには至っておりません。
妊娠期・産後期に目的を持ってトレーニングを実施していた対象者はわずかであり、そのトレーニング内容から我々が目指すトレーニングプログラムに応用できるものは得られませんでした。

今後の課題

今後は対象者を増やして実態の把握に努めると共に、妊娠期や産前・産後期にトレーニングを経験した女性アスリートが抱えていた課題や要望について、情報を収集していきたいと考えています。

アンケート調査

実施内容

妊娠期や産後期のトレーニングに対する需要、妊娠・出産後の競技復帰の希望を知るため、JOC強化指定女性アスリート、及びJOC加盟競技団体の強化指定女性アスリートの中を対象にアンケート調査を行いました。

アンケート調査の内容

妊娠期・産後期のトレーニングに対する需要を確認するため、妊娠期・産後期に参加したいトレーニングプログラムについてのアンケートに回答いただきました。いずれも妊娠・出産後に現役を続けると想定し、トレーニングも安全管理は最善を尽くして実施される場合として回答をいただいています。また、あわせて産後の現役続行の希望についてのアンケートに回答いただきました。

今後の課題

現在(平成27年3月)アンケートを集計しており、アンケート調査によって得られたトレーニングに対する需要と、作成したモデルトレーニングプログラムを元に、今後のトレーニングサポートに反映していきたいと考えています。

妊娠期モデルトレーニングプログラムの作成

実施内容

昨年度に引き続き(一社)日本マタニティフィットネス協会の協力のもと、妊娠期のモデルトレーニングプログラムを作成しました。プログラム作成のモデルとして、競技引退後に妊娠した元アスリートの女性に協力いただきました。
プログラム作成時には、助産師や産婦人科医が帯同し、母体と胎児の健康面に問題が生じることなく、安全に実施できる範囲のトレーニング内容であることを確認しながら進めていきました。

モデルトレーニングプログラムについて

(一社)日本マタニティフィットネス協会におけるマタニティビクスの視察から得られた情報を基に運動強度をマタニティビクスと同等に保ちつつ安全面に問題が生じないように配慮し、アスリートに必要と思われるエクササイズを考慮したモデルトレーニングプログラムを作成しました。なお、妊娠期は個人差が大きいため、今回作成のモデルトレーニングプログラムは、公開はせず、JISS内のマニュアルとして活用する予定です。

今後の課題

今後は、モデルトレーニングプログラムを基に、よりアスリートとして必要な体力要素を考慮した運動強度や運動内容の実施可能な範囲を検討することが課題です。

産前・産後期におけるトレーニングサポートプログラム

実施内容

妊娠・出産を経験した後、現役復帰に向けて練習を再開した女性アスリートに対して、トレーニングサポートを実施しました。
具体的には、筋力・パワー強化のためのウエイトトレーニングと、持久力強化のための持久力トレーニングの2種類のプログラムを作成し、適切な実施方法について指導しました。

得られた成果

体力測定等の結果から、筋力・パワー・持久力といった体力項目で向上が見られたので、トレーニングによる一定の成果が出たものと考えられます。一方、身体組成の改善、特に筋肉量の増加といった点に関しては、大きな成果は見られませんでした。
また、トレーニング効果との直接的な因果関係は不明ですが、当該アスリートは復帰戦となったフェンシング全日本選手権で優勝という好成績を収めました。

今後の課題

大きな成果が見られなかった身体組成の改善に関しては栄養面の影響が大きいので、今後の課題として「栄養サポートとトレーニングサポートの連携」が挙げられます。また、アスリートの生活・育児環境を考慮したうえで、栄養アドバイスを含めた総合的なライフスタイルサポートを提供することが求められていると感じました。

子育て期におけるトレーニングサポートプログラム

実施内容

(1)目的
・支援対象者がNF主催の合宿、競技大会に参加するため、長期遠征をすることとなった
・通常練習時間以外の練習が必要となり、いつも子どもを預けている保育園等で対応ができなくなった
このような場合に育児支援にかかった経費を支援することにより、子育てを行いながらトップアスリートとして競技を継続できるよう、トレーニング環境を整備することを目的とし、実施しました。
(2)支援対象者
・JOCオリンピック強化指定選手及びオリンピック競技種目のNF強化対象選手のうち、NFから推薦のあったアスリート
・小学校6年生までのお子さまをお持ちのアスリート
今年度は、3名のアスリートが支援対象者となり、実際に1名のアスリートにサポートを行いました。
(3)支援前のヒアリング
支援にあたっては、支援対象者本人、支援対象者の所属するNF事務担当者及び支援対象者の所属先担当者に対して事業内容、支援を受けるための手続き説明を実施するとともに、育児に関する現状、要望等を把握するため、ヒアリングを実施しました。

得られた成果

支援を受けた選手からは、
「試合に集中できた」
「自分の試合、表彰式を子どもに間近で見てもらえたので良かった」
と、評価を受けております。本サポートが、単たる金銭的な援助ではなく、アスリートの競技環境整備へよい影響を与えていると思われます。

今後の課題

アスリートの置かれている状況は様々であり、支援に柔軟性を持たせることが今後の課題です。
また、支援実績のなかった2名へのアンケート結果から、今後は手続きや支援内容を、より理解いただくための工夫が必要だと感じました。

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