- Mama Athletes Network (MAN)
- 取材日:平成28年6月27日(月)・7月26日(火)
- 場所:国立スポーツ科学センター
Q. 妊娠・出産・復帰を決めたきっかけ、理由など教えてください
ロンドンオリンピックが終わって所属チームでプレーしていましたが、次はどうしようかすごく悩んでいました。当時お付き合いしている彼がいて、これからのことについて二人で話し合ったことがありました。その時、私の頭の中に選択肢がいくつかありました。ひとつはリオを目指して、これからまた4年間同じ環境でやり続けること。もうひとつは、日本代表やオリンピックとは関係なく、海外でプレーすることでした。彼はイタリアのチームでラグビーをしていて、私も同じようにイタリアやヨーロッパのチームに移籍したいと考えていました。だた、結婚の話になったときに彼から「4年間また同じ環境でリオに向かってやるのはちょっと考えてほしい。でも、子供を産んで復帰するのはありなんじゃない」と言われて、それもいいアイディアだなと思いました。自分の競技以外の人生を考えたとき、子供を持ちたいという気持ちはすごくありました。私は21歳頃からピルを飲んでいたり子宮のトラブルが多かったこともあって、産むなら早い時期がいいと思っていました。競技の方もできる限り長く続けたいという思いがあったので、「このまま競技だけ続けてその後に子供を産みたいと思っても、もしかしたら、もう、そのときにチャンスがないかもしれない・・・自分に好きな人もいないかもしれない・・・」と考えたときに、「今、こうやって言ってくれる人がいるんだから」と、後悔しないために決断しました。また、母に相談した時に娘を面倒見てくれると約束してくれたので、安心して続けられると思いました。このようなことが重なって、「今が妊娠・出産するタイミングかな」と思い、勇気を出しました。でも、すごく悩みました。
Q. 出産を考えたときに準備したことはありますか
私は初めから産んで復帰しようと思って計画していたので、年齢のことを考えると早く妊娠した方がいいと思っていました。また、私は21歳頃からピルを飲み続けていましたから、妊娠する前から産婦人科へ行ってコントロールをしていました。
Q. 妊娠期のトレーニングはどのように計画しましたか
週3回程度です。トレーニングをしていて少しでも不安に思うようなことはやりませんでした。安全にやることを心掛けていました。
Q. 妊娠期のトレーニングはいつからいつまでしていましたか
安定期に入ってから8ヶ月くらいまでやっていました。
Q. 妊娠期のトレーニングは具体的に何を行いましたか
プールに行って軽く泳いだり歩いたりしていました。また、リフレッシュを兼ねて町のジムへ行ってバイクやステップをメインに有酸素運動をしていました。
知人に紹介してもらったトレーナーさんに、「妊娠中こういうエクササイズしたらいいよ」と教えてもらったメニューをやっていました。メニューは主にお尻とかお尻周りのトレーニングが多かったと思います。寝ながらやったり、チューブを使ってやるような強度の軽いものでした。
Q. 出産の状況を教えてください
出産は16時間かかり、長くて大変でした。帝王切開にすれば時間も短縮できてラクだったと思うのですが、お腹を切ったら競技復帰が遅れると聞いていたので、「だめ、切ったらだめ!」と必死に耐えました。
Q. 出産後のトレーニングは具体的に何を行いましたか
最初は歩くところからのスタートでした。走ろうと思ってジョギングを始めても、足が上がらなくて5分ぐらいで止めて帰ったのを覚えています。その時、先は長いなと思いました。出産後は実家に帰っていましたが、母は仕事をしていたので、私ひとりで子供の面倒をみていました。母親が仕事から帰宅した後に少し走っていました。練習の時間を取ることが難しかったです。最初は本当に、ゆっくりゆっくりで楽なことしかやっていなかったです。ジョギングとか5分10分と増やしていって、4か月に30分ゆっくり走れるようになったのを覚えています。お尻のトレーニングは今も継続してやっています。出産時より多くやっていますね。ただ、特別なことはやっていません。具体的にはチューブを使ったり、リフトアップとかランジとかです。
Q. チーム練習に復帰した時期はいつですか
出産後6か月までは自宅で、自分もしくは知り合いのトレーナーさんと一緒にやっていました。6か月以降は所属チームに合流してチームのトレーナーさんにみてもらいながらやっていました。最初の1か月半はチームの練習には合流せず、別でトレーニングして、みんなの練習が終わった後や練習合間にボールを触っていました。だいたい1か月半、2か月弱ですね。チームに合流した頃は準備が全くできていなかったと思います。
Q.出産後のトレーニングで身体の変化を感じる出来事はありましたか
腰は痛くなりやすくなりました。産後一年間は腰に力がうまく入らなくて、抜けやすい感覚がありました。今は落ち着いています。ただ、遠征のときなどは、専用の寝具を持ち歩いて再発しないように気をつけています。
トレーニングは最初、できる重さから始めてだんだんと増やしていきました。バレーボールは夏がシーズンオフでしたから、チームは筋肥大を目的としたトレーニングをしていました。回数をしっかりやっていくという感じだったかな。基本的な種目はできましたが、クリーン、スナッチは身体の土台ができるまではやらなかったです。動けるようになってきたらトレーナーさんにアジリティ的な動きを多くやりたいと伝えて、取り入れてもらっていました。まっすぐ走って切り返すといった動きですね。前後左右の動きは一年間やっていなかったので、何もできなくて焦りました(笑)。切り替えしができないと遅くなります。最初は足が上がらないところからのスタートだったのですが、チームにアキレス腱を切った子がリハビリをしていたので、私も同じようにリハビリのメニューをやっていました。
Q. 試合に復帰した時期はいつですか
1月に産んで10月に公式戦復帰しました。6月から新しいチームに入ったので、競技をしっかり始めたのが5か月後からでした。
Q. 出産や競技復帰することに対して不安はありませんでしたか
不安はありました。ただ、前の自分に戻りたいと思うことは辞めようと思いました。今までの私は私で、次は新しいスタート、新しい感覚でやろうと。「どれくらい戻った?」とか「今、何パーセント戻りましたか?」といった質問をされますが、そういう風には考えていません。新しい自分になろうとしか考えないようにしています。できるようになったこともあれば、できなくなったこともあって、今はトータルのグラフでマイナスがプラスになっていればいいかなと思っています。出産前よりも気持ち的な部分ではすごいいい状態でプレーできるし、トータルで言ったら今の方がすごく充実しています。
ロンドンが終わってからホント色々考えさせられました。以前は数字や評価に一喜一憂して、精神的に追い詰められることも多かったのですが、今は「自分が元気に競技をすることができて、娘も元気ですくすく育ってくれればいいや」と思えるようになりました。そうすると、以前のような精神面での不安定さがなくなってきました。落ち込むこともありますけど、ドツボにはまらなくなってきました。
Q. 今後ママアスリートを目指す選手にどのようなサポートが必要だと思いますか
一番は安心して子供を預けられる人の存在です。私はたまたま母親が見てくれましたが、そういう存在は大きいです。
例えば、シッターさんは練習の時間は見てくれますが、練習が終わるとすぐに子供を返されてしまいます。そうすると、オフの時間やバレー以外の時間に自分がストレッチする時間や休養する時間をとることが難しくて、競技に100%注げません。それって、すごく大変なことだと思いますね。私の場合は母だったので、遠征は基本的には置いていきますし、夜鳴きがひどい時は途中で変わってくれたり、体調悪いときはずっとみてくれてすごく助かりました。
|