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スポーツだけでなく日常生活でも起こる脳振盪
脳振盪というとラグビーやサッカーのような激しいスポーツでしか起こらないと思っていませんか?実は通学中に転んだり、机に頭をぶつけるだけでも起こる可能性があります。 脳が揺さぶられると脳内の軸索と呼ばれる神経繊維がねじれたり、伸びたりして一時的に脳が動かない停電のような状態が起こります。この状態が『脳振盪』です。 さらに、脳振盪は骨折のように目に見える外見上の変化がなく脳内で起こるため、本人ですら症状に気づかず過ごしてしまいがちです。完治したかどうかも脳神経外科医でなければ判断できません。
気づかず過ごしてしまったことで、後遺症が残ったり、最悪の場合、死に至るケースもあります。まずは脳振盪の正しい知識を身につけ、子どもたちや仲間の安全を守っていきましょう。
いま知っておいてほしい脳振盪のこと
脳振盪ってどうしたらなるの?
脳振盪は頭をぶつけたり、物がぶつかったりする直接的な衝撃や、体が床にたたきつけられて脳に伝わる間接的な衝撃で起こります。この時、一時的に脳内の血流量は低下します。レントゲンやMRIでは異常が見られないという特徴もあります。
1.顔や頭に大きな外力がかかり、その衝撃で脳が揺さぶられます。頭をぶつけていなくても、体への衝撃で脳が揺さぶられることもあります。
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2.軸索とよばれる神経繊維のまわりの組織は何層にもなっていて、それぞれ回転速度が異なるためズレが生じます。
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3.脳が揺れた衝撃で、神経繊維が伸びたりねじれたりして異常が生じ、それにより脳の機能が変化するのが脳振盪です。 |
脳振盪が起こりやすいシチュエーション
スポーツや日常生活でもっともよくみられる脳振盪の発生状況です。
「人と衝突」タックル、肘打ち、スクリーンプレー
「床と衝突」転倒する、投げられる
「物と衝突」ボール、バット、スティックにあたる
脳振盪を予防する方法
プレーをする前にこの6つを確認することが予防につながります。
1.体格差や体力差をなくす
中学1年生と3年生や、初心者と熟練者のような組み合わせでのプレーはしない。
2.施設設備に不備がないか確認する
コートと壁が近い場合や、転倒しやすい床などは特にチェックしましょう。
3.体に合った防具を身につける
つねにストレスなく体を動かせる状態をつくりましょう。
4.衝突の少ないポジションに変える
脳振盪の既往歴が複数回ある人は、ポジション変えやプレースタイルを変えることを検討しましょう。
5.脳震盪を疑った選手は、プレーから外す
脳振盪のままプレーを続けると、頭がぼーっとした状態が続きさらに衝突しやすくなります。
6.試合や練習の安全文化を構築する
選手に安全が第一優先であることを伝え、脳振盪になったことを報告することの重要性について話をしましょう。
脳振盪になるとこんな症状が見られます
身体の変化だけでなく、睡眠や気持ち、記憶力にも変化が見られます。普段の状態と比較して観察しましょう。
身体の変化
・頭が痛い
・頭がしめつけられる
・首が痛い
・吐き気がある/吐いた
・めまいがする
・ぼやけて見える
・ふらつく
・光に敏感
・音に敏感
・疲れる/やる気が出ない |
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気持ちの変化
・いつもより感情的
・いつもよりイライラする
・理由なく悲しい
気分が落ち込む
・心配/不安
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睡眠の変化
・眠気が強い
・眠れない/寝付けない
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記憶力の変化
・動きや考えが遅くなった
・霧の中にいる感じ(ぼーっとする)
・「何かおかしい」と感じる
・集中できない
・覚えられない
・混乱している
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\見えないところで出血しているかも!危険!/
セカンドインパクトシンドロームとは?
脳振盪になった後、回復しないうちに再度、脳振盪になるような強い衝撃が脳に伝わると、脳が腫れやすく血管が破綻しやすい状態に。脳を包んでいる硬膜の下に血がたまる硬膜下血腫が起こります。この状態をセカンドインパクトシンドロームといいます。脳のことはまだわかっていないことも沢山ありますが、頭への衝撃はどんな時でも危険なんだ、と考えるようにしてください。
※死に至る危険性があり後遺症が残る可能性が極めて高いです。
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子どもから大人まで誰でもなる可能性が・・・【脳振盪カルテ】
CASE1 高校1年生【ラグビー】 |
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CASE2 大学3年生【バスケットボール】 |
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【状況】
タックルをした時に相手選手の腰と自分の頭が衝突
【徴候・症状】
意識/記憶消失あり、頭痛、めまい、霧の中にいる感じ、眠くなりやすい |
【状況】
リバウンドボールを争い中に
相手選手のひじがアゴを直撃
【徴候・症状】
意識/記憶消失なし、頭痛、吐き気、
バランス不良、疲労感、集中力低下
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CASE3 24歳【フットボール】 |
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CASE4 小学3年生【通学】 |
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【状況】
違う方向を向いていたため、
ボールが飛んできたことに気づかず、
ボールが頭部を直撃
【徴候・症状】
意識消失なし、記憶消失あり、頭痛、
頭部圧迫感、めまい、吐き気、
光に敏感、気分が良くない |
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【状況】
雨の日にすべって転んで後頭部を床に打ち付けた
【徴候・症状】
意識/記憶消失なし、頭痛、嘔吐、ものがかすんで見える、混乱している、いつもより感情的 |
RED FLAGS ~こんな時はすぐに救急車を~
「RED FLAGS」とは重い疾患の兆候を指します。下記のような徴候が1つでも見られたら脳振盪より重い脳損傷の可能性があります。すぐに救急車を呼びましょう!
□ 首の痛み、首の圧痛
□ 二重に見える
□ 手足の脱力、しびれ、チクチク痛い
□ 強い頭痛がひどくなる
□ 発作やけいれん
□ 意識消失
□ 意識障害
□ 嘔吐
□ 落ち着きがなくなる 興奮状態/かんしゃく
脳振盪10の徴候
まずはココをチェック!コーチや保護者でもわかる!10の徴候
まずは選手をよく観察し、以下のような症状がないかチェックしましょう。
① 意識消失(一瞬でも)
② 倒れて動かない/立ち上がるのが遅い
③ ぼーっとしている、うつろな表情
④ フラフラしている
⑤ 動きが遅い/ぎこちない
⑥ 受け答えが適切でない/遅い
⑦ 人格の変化
⑧ 混乱している
⑨ 対戦相手がわからない
⑩ 衝撃を受けた前/後のことが思い出せない
徴候が見られた時の対応方法
徴候が見られた直後
脳振盪の徴候が見られても、選手は「大丈夫です」と言う傾向があります。
選手に徴候が見られた直後は安全を考えて5つのSTEPで対応しましょう。
STEP1 選手をプレーから外す
「脳振盪10の徴候」が1つでも見られたら、その選手をプレーからすぐに外す。その日はプレーに戻してはいけません!
STEP2 「RED FLAGS」でチェックする
脳振盪以上のケガをしていないか確認しましょう。1つでも当てはまるようなら救急車を呼びましょう。
STEP3 いまの状態を確認する
脳振盪になった時の状況や「脳振盪10の徴候」、現在の自覚症状などを確認し、記録(メモ)しましょう。
STEP4 脳神経外科医に診てもらう
コーチや保護者が重症度を判断するのは絶対に×。STEP3で記録した内容や過去に脳振盪を起こしたことがあるかを脳神経外科医に伝え、診察してもらいましょう。
STEP5 保護者へ説明する
選手に付き添っていた人が脳振盪になった時の状況を保護者に伝えます。
帰宅後
帰宅後の過ごし方、禁忌事項についても説明しましょう。
帰宅後は脳や体を疲れさせるような行動はNGです。必ず誰かが見守り、選手を1人にすることは避けましょう。
不安定になった選手たちへの接し方
試合や練習に参加できないことで、抵抗したり、怒ったりする選手へはプレーへ戻ることで起こる危険性について説明しておきましょう。
知っておきたい3つの説明ポイント
1.状況をきちんと説明する
いま症状がなくても、後で症状が重くなる例を紹介する
2.必ず回復することを説明する
安静にしていれば日ごとに回復することを説明する
3.サポートし、励ます
必ずそばにいて復帰するまで見守ることを約束する
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脳振盪からの復帰は段階的に
各段階で症状が出ていないかを確認しながらすすめ、症状や徴候が現れた場合はすぐに脳神経外科医に報告しましょう。【復帰の目安…成人:7~10日、小児:2~4週間】
学業復帰の仕方
教員、養護教諭、保護者が協力し、体調の変化を察知する体制をつくることが大切です。
脳に負担をかけないよう、休憩をとるように声掛けしていきましょう。
競技復帰の仕方
STEP1 症状を悪化させない範囲での日常生活
仕事や学業復帰ができたら、STEP2からのスポーツ活動への段階的な競技復帰メニューを実行する。
STEP2 軽い有酸素運動(心拍数の増加)
ウォーキングやエアロバイクを用いた軽い運動。※筋力トレーニングは避ける。
STEP3 競技に特化した運動(動作/負荷の追加)
頭部への衝撃や回転を伴わない運動。ランニングやステップ、軽いパスやキック動作など。
STEP4 接触プレーのない運動
より強度で負荷の高い運動。筋力トレーニングを軽い負荷から開始する。
STEP5 接触プレーを含む練習
接触プレーが問題なく行えるか確認しながら、通常の練習に参加する。脳振盪になる前の体力まで戻すようトレーニングする。
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[競技復帰(全練習参加・試合参加)]
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