根拠に基づいたアスリート育成パスウェイ構築の試み
(日本版FTEMの活用)
日本スポーツ振興センター(JSC)では、子どもがスポーツに触れてからトップアスリートになるまでの道すじを作る「アスリート育成パスウェイ」の事業を実施しています。その事業の中で、日本の競技スポーツの現状を踏まえたスポーツとアスリート育成の包括的な枠組み「日本版FTEM(Foundation、Talent、Elite、Mastery)※」を2019年に開発しました。
※衣笠泰介,舩先康平,藤原昌,Elissa Morley,Jason Gulbin. 我が国のスポーツとアスリート育成における国際的な包括的枠組みの適用:「日本版FTEM」の開発. Journal of High Performance Sport, 4:127-140. 2019[PDF:719KB]
図:日本におけるスポーツとアスリート育成の枠組み
「日本版FTEM」は独立行政法人日本スポーツ振興センターの登録商標です。
スポーツを「する」者の主な経験を図の左から右までの11(Foundation:3段階、Talent:4段階、Elite:3段階、Mastery:1段階)に分けて示しています。また図の真ん中には、「3つの視点から見た育成の基軸(個人・スポーツ・システム)」というスポーツを「ささえる」者の観点もあります。
諸外国では、日本版FTEMが開発される前からアスリート育成に関する理論モデルがこれまでに数多く公表されてきました。代表例として、一流になるまでの期間を表す「10年(1万時間)ルール」やカナダの「長期競技者育成理論(LTAD: Long Term Athlete Development)」があります。2013年にはオーストラリアが根拠に基づいたスポーツとアスリート育成の枠組みとして「FTEMフレームワーク」を提唱しました。こうした色々な育成モデルや枠組みがある中で、国際オリンピック委員会(IOC)は、柔軟性のある実行可能な根拠に基づいたアスリート育成の包括的な枠組みを取り入れることを推奨しています。
一方で、JSCでは2012年からアスリート育成パスウェイに関連する事業を通して、27の中央競技団体や26の地方公共団体と現場での実践知や研究論文から得られる理論知を蓄積してきました。
このような背景で開発されたのが、冒頭で紹介した「日本版FTEM」です。
現在、「日本版FTEM」を活用して、2つの中央競技団体が競技別の育成モデル構築に取組んでいます。これまでに中央競技団体や元アスリートからは、「競技団体の取組みを見える化できる」「どの段階から次のどの段階に移行できるかがわかる」など、ポジティブなご意見を頂いています。
JSCでは今後も「日本版FTEM」を活用して多くの関係者と様々な視点から根拠に基づいたアスリート育成パスウェイを構築していきたいと考えています。
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