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サポートのたね競技スポーツの支援に役立つ研究のエッセンス

「サポートのたね」では、JISSで行っている研究の報告をわかりやすくコラムとして紹介します。
ここで蒔いた「たね」が、いつの日かスポーツの世界で花開くことを願っています。

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04 22

投稿者: host
2019/04/22 11:55

スポーツ研究部研究員 横澤 俊治

私たちは、様々な競技を専門にしている男性アスリート11名に立ち幅跳びを実施してもらい、その踏切動作中に発揮したパワーと筋力測定器による関節伸展パワー※との関係に着目して、跳躍距離の制限要因を検討しました。

その結果、踏切動作中に発揮された膝関節や股関節のパワー(体重で割った値)が高い選手のほうが跳躍距離が大きくなっていました。立ち幅跳びは下肢のパワーの発揮が重要な運動の一つですのでこれは当然の結果と言えます。一方、踏切動作中の下肢関節のパワーと筋力測定器による同じ関節の最大パワーとの間には相関関係がみられませんでした。つまり、筋力測定器によるパワーの大小は踏切動作中のパワーに直結しなかったことになります。(図1参照)

図1:最大筋力、踏切中のパワー、跳躍距離の関係


そして、筋力測定器では高いパワーを発揮できるのに立ち幅跳びになると高いパワーが発揮できなかった選手は、踏切動作中の腕振りのタイミングや反動動作の使い方に問題があることが分かりました。
筋力測定器による関節の伸展運動は一つの関節のみを伸ばすだけの極めて単純な運動課題(単関節運動)と言えます。一方、立ち幅跳びは多くの関節を同時に伸展させる点、一度屈曲させてから伸展させる「反動動作」をともなう点、腕振りを利用する点などから比較的複雑な運動課題と考えれます。

立ち幅跳びのように複雑な運動課題では、高いパワーは発揮したけれど跳ぶ方向や着地などに問題があって跳躍距離に結びつかないという選手も若干いましたが(図2の右)、一方で、腕振りのタイミングや反動動作の使い方に問題があって踏切動作中に高いパワーを発揮すること自体ができなくなる選手が多いことが本研究から分かりました(図2の左)。見方を変えると、複雑な運動課題において発揮したパワーが小さいからといって、トレーニングマシンによる単関節運動で鍛えることが効果的とは限らないとも言えるのではないでしょうか。

※筋力測定器による関節伸展パワー:膝関節や股関節などについて指定された関節角速度で全力で伸展運動を行った時のパワー。(図1の左は膝伸展運動の写真)

図2:遠くに跳べない理由


論文の原文はこちらのURLをクリックしてご覧いただけます。→ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/61/1/61_15082/_article/-char/ja/

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