JISS-worker

ジスワーカー

JISSのスタッフ、勤務経験者がJISSでの仕事を紹介します。


08 24

投稿者: host
2011/08/24 0:00

現職 (財)日本テニス協会強化本部ナショナルチーム情報戦略担当スタッフ
専門領域 スポーツ情報、ゲーム分析
最終学歴 筑波大学大学院修士課程体育研究科修了

元スポーツ情報研究部契約職員(情報処理技術者)

現在の業務内容

現在、私は財団法人日本テニス協会強化本部との間で契約を取り交わした形で情報戦略担当スタッフとして活動しています。これは通常の事務局職員などとは異なり、強化に関連することに特化した事のみを担当する役割です。
強化のみを取り扱う役職になりますので、実際には年俸を提示されてテニス協会との間に契約を取り交わす個人事業主として活動していることになり、通常は味の素ナショナルトレーニングセンターの屋内テニスコートに併設されているテクニカルルームに常駐して勤務しています。これ以外にも大会時のサポートを行うための出張等を含めて年間200日程度の拘束日数をもってテニス協会の職務を行う事になっており、現状でこれ以外の仕事は行っていません。

強化本部の情報戦略スタッフとしての活動ですが、主に行う業務を挙げてみると
○ 味の素ナショナルトレーニングセンターの映像関連機器や情報関連機器の管理・運営
○ 上記NTC設置機材やテニス協会で保持する機材などを使ったナショナルチーム所属選手、コーチ等に対する情報関連サポート

> トレーニングや試合映像の撮影およびフィードバック
> 強化関連の各種情報に関する分析作業とレポート作成によるフィードバック作業(映像含む)
> コーチや選手、強化本部役員が各種発表等を行う際のプレゼンテーション等の作成サポート

○ テニス協会で認定する各種指導者資格の養成講習会における講師役
○ 強化本部およびナショナルチームからテニス協会内外に向けた情報提供を目的とする情報関連資料の作成作業(機関紙様の物や、Webを通した物等)
○ 情報関連分野における文科省やJISS、JOC、マルチサポート事業等の公的機関との連絡調整役
○ 上記公的機関へ提出する各種資料の叩き台作成と成文化
○ ナショナルチームにおける事業(=強化に関わる計画)の叩き台作成と、強化関連スタッフとの連絡調整等を行った上での成文化

といった感じになると思います。物量的に意外に多くの時間を割いているのが「叩き台作成」と「成文化」と書いた作業です。私の中で勝手に「作文作業」と考えていますが、この作文作業をデスクワークとし、実際の大会やトレーニングの現場に帯同し、選手やコーチに直に接しながら映像撮影等のサポートを行う事を事後まで含めてフィールドワークとすれば両者の比はデスク対フィールドで2対1ぐらいになるかな?と思っています。
強化に特化している事を業務としているので明確にデスクワークとフィールドワークの境目を区別するのはもちろん難しい側面がありますが、「強化のためのナショナルチームスタッフ」という一般的なイメージとはかけ離れた活動をしている部分も多く、それが情報戦略スタッフの役割と私の中では定義づけているので、自分の業務を他人に説明するのはかなり難解な状況です。
よくあるパターンが初対面の人などに私の役職が書かれたテニス協会の名刺をお渡しすると「へー、で、いったいぜんたい何が仕事なのですか?」と聞かれるパターンです。その際も、その場で言葉だけで説明するのは非常に難しく、名刺をお渡しした方に自分の役割が伝わりきったという感覚を持った事は無いので、殆どの方には「なんだかよく分からない謎のスタッフ」として映っているのではないかと思います。
そうなってしまうのは、強化に特化していると言っても挙げ連ねたように、自分の担当する業務範疇が非常に多岐にわたっていて便利屋的な側面もある事に原因があり、あまり良くない事だとは思いますが、現状では「情報戦略スタッフ」という役割の確立化を行う上ではこういった方法が必要なのだと思います。
「情報戦略」という言葉と、そこに携わるスタッフの人材が必要というのはJISSという環境では当たり前になっている事だと思いますが、NFレベルではまだまだ浸透度が浅く、自分がテニスの強化現場において「情報戦略スタッフ」という役職を確立していくという重責を担っていると思います。
実際にテニス協会における私の上司という立場になり、かつ雇用の決定権を握っていると言って良い強化本部長である福井 烈氏(JOC理事)やナショナルチームのゼネラルマネージャーである竹内 映二氏(JOC専任コーチングディレクター)からは「情報戦略スタッフの後任をしっかり育てる事」と「情報戦略スタッフの価値をテニス協会内の強化関連スタッフ以外の人にも認知してもらえるように確立する事」を私のミッションとして与えられており、大きな意味で言えばテニス協会内における私の仕事はこの二つのミッションを完遂するという事になると思います。

JISSでの業務内容

JISSではスポーツ情報研究部の契約職員として働いていました。役職としては情報処理技術者としての勤務であり、主な役割としてはJISS3階の情報部オフィスに設置されている「情報サービス室」の管理・運営とユーザーサポートでした。また、これ以外の業務としてはJISSのテニス協会に対するトータルサポートにおける情報サポート部門の主担当者としての活動や競技団体等に向けた講習会における講師役などでした。
JISS3階にある情報サービス室とは、コンピュータ十数台と映像関連機器や複合機等を設置し、JISSの利用者である各競技の選手やコーチ、JISS内の研究者や事務従事者に対して機器の利用をサービスする部屋の事であり、そこの機器の扱い方などに関して利用者が分からない事があれば質問を受けてサポートするという立場での業務を行っていました。
利用者から問われる内容は本当に基礎的な事から映像編集等に関連する専門的な事まで多岐に渡っており、年齢層も幅が広いため様々な経験が出来たと思います。
またもう一つの大きな業務であったテニス協会に対する情報サポートの主担当者としての役割ですが、JISSに対してテニス協会からリクエストされていた内容は主大会における試合映像の撮影とゲーム分析であり、この活動をJISSで担当していた事が現職を得るに至るまで、テニス協会と深く関わる事になった大きなきっかけである事は間違いない事実です。
JISSには2006年度から2009年度末まで4年間、契約職員として在籍しましたが、実際には2004年度のアテネオリンピック時から情報研究部関連のアルバイトに関わり初め、2005年度からはパートタイムではありますが定期的に情報サービス室のユーザーサポートとしてアルバイトで出入りしており、6年間JISSの業務に関わる関係があったという事になります。その初年度の2004年度から実際にテニスのフィールドワークに出向く役割を与えられて活動をしており、そこでテニス協会の強化担当スタッフと関わりが出来たことが現職に繋がってきています。
JISSにテニス協会からリクエストされた内容をサポートするために、フィールドに出向いてテニスを専門にする事の出来るスタッフがたまたまJISSにおらず、アルバイトで出入りしていて、テニス出身者だった私にたまたま仕事が振られた事や、そのサポートに関してテニス協会側の代表者としてJISSに打ち合わせに来ていたのが、私の出身大学である鹿屋体育大学で、実際に私の指導を担当していたテニスの高橋 仁大先生だった事など、今考えるとJISSにおける偶然が重なった事が現職を得ることに至っているので何とも不思議な縁と運を感じます。
ただ、日本のトップスポーツにおいて、強化のためにサポートする専門施設としてJISSが設立され、実際に日本のスポーツ界における課題としての案件や、そこに関わる人、その人達が持ち寄る情報や知見が集約して問題に対処できる場として存在する事はJISSが日本のスポーツ界の中で果たすべき当然の機能の一つだと思いますから、今になって思えばJISSを通して私のような事例が起きるのは必然だったのであり、たまたまその事例が個人レベルでは私の身の回りで起きた事だけが偶然だったのだなと思います。

JISSの仕事で心に残っているもの(大変だったこと)

JISSという場所にいる以上は大変な事が当たり前だと思いますので、今振り返って考えてみて記憶に残るほど大変だったと思う事は意外と少ないです。

おそらく他の人から見たら大変に見える仕事はサポート業務で競技が行われているフィールドに出て行ったときに生じる事が多かったのだと思いますが、フィールドに出て行けば、その場の状況に合わせられる能力が無ければ信用が得られませんし、ごくごく当たり前の事として対応していました。

それ以外にも他人から見たら大変な事も、基本的にはあまりストレスに感じずに対応できていたと思いますが、それは元々自分自身がテニスの強化現場に携わる仕事がしたいというモチベーションを持っていた事と、そのための準備を自分なりに学生の時から継続して準備してきていた事が大きな原因だと思います。

そういう意味では、仕事そのものが大変云々というよりは、他人から見たら大変な仕事を自分自身が楽しみながら継続してやり続けるためのモチベーションを保つことの方が大変だったかもしれません。

でも一番大変な場所であるはずのサポートを行うフィールドに出ていったときにそういったモチベーションの素となるきっかけをもらえる事が多く、自分にとっては大変幸せな仕事だったのではと思います。

具体的に何がモチベーションの素になったかという事を言葉で言い表すのは非常に難しいので書きませんが、仕事を行っている事自体が自分に新しい高いエネルギーを与えてくれていた事は間違いないと思います。

JISSの仕事で心に残っているもの(ためになったこと)

なんと言っても、より自分自身の希望に添った、新しい職場である現職につながる色々な機会を与えてくれた事がためになった事だと思いますが、それ以外に今振り返ってみて、今の自分にとって非常にためになっているのが「自分の専門外」の様々なものに触れる機会が多かった事だと思います。

専門外、の意味は多種多様で、まずは自分が「テニスを専門」としている中で、それ以外の競技における様々なスペシャリスト、例えば選手という立場であったり、コーチという立場であったり、その競技の情報戦略の立場の人であったりといった様々なテニス以外の畑の人たちと接する機会が得られた事は現在の職務を行う上でかなり役に立っていると思います。

また私自身は体育系大学において、テニスにおけるコーチングやトレーニング、コンディショニングといった分野を中心とした事を専門としていたため、情報研究部という部署に「情報処理技術者」という役職で入った事でも「専門外のもの」に触れる機会につながっていたと思います。情報研究部にはスポーツ自体が専門ではない映像や情報技術のスペシャリストの方も多くいらっしゃいます。私自身、元々はテニスのコーチングやトレーニング指導の場においてビデオとコンピュータをうまく活用したいから、という理由でコンピュータによる映像処理やネット関連の知識を仕入れ活用していたので、正直なところ一般的に考えた「情報処理技術者」という役職からすると素人に毛が生えた程度でとても仕事にするレベルではないというレベルのはずです。そういった知識とトップスポーツにおける強化現場とをどうやって具体的に結びつけるかという点に関しては私のような人間がいる事の意味はもちろんあったと思いますが、知識や情報処理分野を仕事とする場合における本来の専門性という意味ではやはり本職の人たちにはかなわないので、そういった人たちのノウハウや仕事ぶりを体感した上で現職に至れた事には大きな意味があると思います。

また、研究としての分野で様々な専門外の人と接する機会があったこともためになったことだと思います。トップスポーツの強化の現場において、ある特定の一分野の研究結果のみを適用する事が、パフォーマンス全体の向上に寄与することは殆ど無く、様々な研究成果がプラス面マイナス面、両方含めてクロスオーバーして得られた結果で強化現場におけるパフォーマンスの向上は生じる物だと思います。そのためには競技の専門家となる立場の人間がそれぞれの研究分野に関して概要を理解し、全体を俯瞰できる事が非常に大切だと思いますので、JISSという最先端の研究を行っている場でそれぞれの分野の専門家に接する機会が得られた事は、今現在自分がテニスの強化に携わる立場となったうえで生きている事が多く、JISSにいたことでためになっている部分だと思います。

JISS,日本スポーツ振興センターの仕事のやりがいは?

私の場合、契約職員という年限が区切られた期間において、最終的に私がやりたいと希望していたテニスの強化を仕事とする事につなげるための1ステップとして上手く活用したいと思って入った背景があり、ある意味不純な動機でJISSに入っているので、やりがいに関してお答えすることは不適切かもしれません。

ただ、JISSはこの先も継続的にそういった目的をもった方が入ってくる可能性が高い場所であり、そういった経緯でJISSが育てた人材を日本のスポーツ界の向上のためにつなげるという機能もJISSの果たすべき役割の一つかと思いますので、そういった目論見においてJISSでの仕事のやりがいはなんと言っても刺激が多いという事だと思います。

ためになった事で書いたように、スポーツの競技力向上という狭い世界ではありますが、そんな中でも自分がまったく知らない領域で競技力向上に携わる専門家が様々な分野でごろごろと周りにいて、その人達とクロスオーバーしながら実際のトップのスポーツの強化現場で仕事をやっていく環境は今のところ日本にはJISSぐらいにしか無いと言って良いと思います。

そういう意味でJISSにおける仕事には刺激が多く転がっており、次のステップアップのためには格好の修行の場だと思います。

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