ホーム > 知る・学ぶ > アスリートを支えるスポーツ科学 > ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)研究員インタビュー:高柳尚司(スポーツ医学研究部門 トレーニング指導グループ)

ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)研究員インタビュー:高柳尚司(スポーツ医学研究部門 トレーニング指導グループ)

HPSC研究員インタビュー 高柳指導員


スポーツ医学研究部門 トレーニング指導グループに所属する高柳尚司さん。2021年度より国立スポーツ科学センター(以下、JISS)のトレーニング指導員として、主にバドミントンやテニス選手のトレーニング指導に従事しています。ハイパフォーマンススポーツセンター(以下、HPSC)で、アスリートの体力や競技力の向上に取り組むトレーニング指導員の活動についてお話を聞きました。


トレーニング指導員の役割


現在、私がトレーニング指導を担当している競技種目は、主にバドミントンとテニスです。トレーニング指導員は、アスリートに対して、トレーニング指導を通して体力の向上を図り、競技力の向上に貢献することを役割としています。具体的には、競技特性や選手個々の課題を明確にした上で測定評価を行い、必要な体力要素を洗い出します。それを基にトレーニング介入を行い、効果的に体力が向上しているかを適宜確認しながらトレーニング指導を行います。測定したデータやトレーニングの状況等については、科学部や栄養、心理、リハビリ等、他分野の専門家とも共有しながら、最善のサポートができるよう連携を図っています。また、アスリートのサポートを行うだけでなく、ここで得られた知見を地域のスポーツ科学センター等と共有し、日本全体の競技力向上に寄与することも私達の役割の一つです。


トレーニング指導員を目指した理由


私は学生時代に野球をやっていましたが、よく肩や肘などのケガに悩まされていました。その際、自身でもケガやトレーニングについて本やインターネットで調べているうちに「スポーツ科学」という学問があることを知り、もっと本格的に勉強したいと思うようになりました。また、同時に「トレーナー」や「ストレングス&コンディショニングコーチ(S&Cコーチ)」という仕事があることも知りました。


高校卒業後は、大学でスポーツ科学を専攻し、大学院でも勉強を続ける中で、スポーツの持つ「多くの人々に感動を与える“チカラ”」に魅力を感じ、自身もそれに携わるような仕事がしたいと思うようになりました。そこで、大学院修了後は、プロ野球チームにてトレーナーとして働いた後、2021年度よりJISSに入職しました。


インタビューに答える高柳指導員


トレーニング指導において心がけていること


スポーツパフォーマンスを高めるという点で言うと、常に生理学、運動学、トレーニング論などの原理原則に立ち返りながらトレーニング指導を行うことだと思います。「競技における合理的な運動とは何か?それに紐づく体力要素・トレーニングとは何か?」を常に考えつつ、現在行なっている部分としてのトレーニングと、トレーニング目標やパフォーマンス全体との関係性を考えながら指導に当たることが大切だと思います。
スポーツパフォーマンスという複雑な事象に対して、スポーツ科学の知見を背景とした原理原則に立ち返りながら指導を行うことで、パフォーマンスを向上させる確率を上げることができると思います。以前はプロ野球の現場でトレーニング指導を行なっていました。野球のような技術的要素の強い種目において、「体力がどのような関わりを持っているのか?そのためのトレーニングはどうあるべきか?」を常に考えながら指導してきた経験を、今の仕事にも役立てることができたらと考えています。


トレーニングジムにてペンチプレスを補助する高柳指導員


選手のサポートを行う上で理想的な環境


JISSの魅力は、科学、栄養、心理やリハビリ等、様々な専門家がアスリートのサポートに携わっていることです。選手の競技力向上のために、多角的な視点からアイディアを出し合いながら選手サポートができる環境が魅力だと思います。このような環境は、他にはなかなかありません。時には、自分では思いつかないようなアイディアをもらうこともあります。自身の知見を広げる意味でも、また、選手のサポートを行う上でも理想的な環境だと思います。
特に、今年は「パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会」が開催されるので、私たちが携わっているアスリートたちが最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートしたいと思っています。


トレーニングジムにてスクワットを指導する高柳指導員


JISSを目指す学生へのメッセージ


私達の仕事は、他の分野と少し異なり、トレーニング指導を通して直接的に選手と関わることが多い部門です。自身の取り組みが選手のパフォーマンスに直接影響を及ぼす可能性があるため、大きな責任が伴います。しかし、選手の競技力向上に貢献できた時には大きなやりがいを感じる仕事だと思います。
トレーナーやS&Cコーチを目指す方は、専門的な勉強も大切ですが、まずは自分自身が競技に打ち込み、一生懸命身体を動かす経験をすることが今後の仕事に生きてくると思います。競技に打ち込むことで得られる達成感や挫折感、運動体験、コミュニケーション等は、トレーニング指導の幅を広げてくれると思うので、学生のうちに経験しておくのが良いと思います。
また、JISSで働く際には、スポーツ科学に関する知識を有しているだけでなく、他分野の専門家とも連携を図ることが多いので、大学院等に行き、研究に関する勉強もある程度できている方が望ましいかと思います。
スポーツに関わる仕事に就くためにやるべき事はたくさんありますが、学生である今しかできないことに一生懸命取り組んでもらえたらと思います。


高柳指導員の全体写真


<プロフィール>

高柳尚司(たかやなぎ・しょうじ)
修士(体育学)
筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻博士前期課程 修了。
2021年度よりJISSのトレーニング指導員として、主にバドミントンやテニス選手のトレーニング指導に従事する。

ページトップへ