施設面へのアプローチ
国立競技場施設管理課
メインスタンドからグラウンド全体の眺め |
去る2011年10月8日~23日まで、ラグビーワールドカップ(以下「RWC」という。)2011決勝トーナメントが行われ、開催国ニュージーランドの24年ぶりの優勝で幕を閉じました。一方、日本としては2019年に開催が決定しているRWC日本大会に向けて、本大会のノウハウを活かさなければなりません。本稿では、施設・設備の機能を中心に、メイン会場であるイーデンパークスタジアムについて写真と共に視察内容を紹介いたします。
イーデンパークは1987年第1回RWCの会場であり、24年の歳月を経て、今大会で再び使用されることとなりました。RWCの開催に当たり、その構造体を一部残し、既存躯体から薄膜構造の外壁を持ち出す改修を行い、仮設スタンド1万席を含めた6万人収容のスタジアムに生まれ変わりました。
メイン・バックスタンドの上部に屋根がかかり、仮設スタンドは屋根がありません。ラグビー専用スタジアムだけあり、下段はほぼプレーヤーと同じ目線です。9月上旬から毎週末使用されてきたため、芝への負担が心配されましたが、遠目にはよい状態を保っています。
仮説スタンド
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右の写真は仮設スタンドを撮影したものです。単管パイプとメッシュシートによる設えで、まさに〝仮設スタンド〟といった印象ですが、大会後の施設運営を考えた対策と言えます。身障者席の間には、介添者が座る固定席も設けられています。なお、見学参加者が首から提げているIDはRWC運営のために開発された入退出管理システムにより発行され、延べ4万人が登録されています。また、スタジアム1階は全周を車で回れるようになっており、選手は大型バスから直接控室にアプローチすることができます。
下の写真は、敷地内のパビリオン内部です。近年のRWCでは興行的に成功しており、以前にも増して『ホスピタリティ(おもてなし)』が求められています。RWCの歴史を語るエントランスを通ると、200人収容可能なレストランが4か所現れます。この空間は、(選ばれた)お客様と直接触れる部分であり、スタジアム各所サインなどと共に、ニュージーランド国内の著名なデザイナーと協同で計画したとのことです。この他に、メインスタンドにはフロア全体に及ぶVIPラウンジがあり、その上階には国立競技場でいうところの「スカイラウンジ」のような、スポンサーのための部屋が約80室用意されています。
撮影室の様子 |
雰囲気のあるパビリオン内部 |
メインカメラが設置された撮影室は、ガラスパーテーションを全開にできるようになっています。屋根にはカメラ用クレーンが4基設置され、カメラを自在にコントロールすることにより、迫力のある映像を撮影できます。各国のメディア控室に隣接して、記者会見場も備えています。
このように、RWCほどのビッグゲームのメインスタジアムになると、放送施設(スタジアム内スタジオ・中継ブース)や設備について、スタジアムの設計段階から念頭に置いた平面計画が求められます。
また、スタジアムの外周には、スポンサー特設ブースが数多く設置され、試合前にイベントが開催されるなど、利用者の満足度を向上させています。
スタジアム以外でも、オーシャンフロントの、〝ファンゾーン〟といったホスピタリティ施設が点在し、そのようなエリアは日本大会でも必須であるでしょう。国土が狭く密集した日本では、単にスタジアムだけの対応ではなく、国や自治体の協力も必要になります。
大会運営・施設整備等において、2019年日本大会に期待されているものについて、本大会の視察を踏まえて引き続き考察し、準備を進めなければならないと考えています。あのRWCの熱気と、世界中から観客が日本に来る、その現場が国立競技場であることを願って、新しい競技場を考えていく糧にしなければなりません。
利用者で溢れかえるスポンサー特設ブース |
広々とした記者会見場 |
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