地震災害に備えて~国立スポーツ科学センター防災訓練レポート~
JISSで初の全スタッフ参加の防災訓練実施
2011年12月14日(水)、国立スポーツ科学センター(JISS)において初めてとなる、全スタッフ参加による全館避難型の防災訓練を行いました。
これまでJISSでは、直接的に消火活動・避難誘導等に当たる自衛消防隊員と避難用の人員のみで火災発生を想定した訓練を実施していました。しかし、3月11日に東日本大震災が発生した際に各スタッフが地震発生時の基本的な行動などが分からず、迅速な行動が取れなかったこと等の反省があり、スタッフの自主的な防災意識と対応技術の向上を目的として、今回初めて全スタッフ参加で地震発生を想定した防災訓練を行うこととなりました。
JISSでは普段から多くの選手やコーチが施設を利用するため、勤務するスタッフは、自分の身の安全を確保することはもちろんのこと、選手・コーチなど利用者を安全に避難誘導することも求められます。これまでは1階の運営部スタッフが地下1階から7階まで全フロアの避難誘導を行う体制を取っていましたが、先日の大震災発生時には、避難誘導はおろか、それぞれの持ち場への到着にも非常に時間がかかり、その結果、避難の完了及び確認作業が遅れました。そのため、各フロアに分けてそれぞれの階に常勤しているスタッフを避難誘導や連絡担当として割り当て、部屋の破損状況やケガ人の有無などを確認し、迅速に避難誘導を行うことのできる体制へと変更しました。
迅速な情報収集と安全な避難誘導
訓練は、地震発生(想定)を知らせるアラーム放送から始まりました。放送が始まると、各スタッフは事前配布したヘルメットを着用して机の下に隠れて身の安全を確保します。揺れが収まると同時に、自衛消防隊の各班長は防災センター(中央監視室)に集まり対策本部を設置、スタッフや利用者の怪我の有無や各部屋の被害状況などの情報を収集します。各フロアに配置された連絡担当のスタッフは、支給されているPHSを使用して防災センターへ被害状況などを速やかに連絡します。
情報の収集が終わると同時に、利用者・スタッフの避難誘導を実施します。しかしながら、全フロアで同時に誘導を行うと、館内の滞在者数が多いために階段付近などで渋滞が発生して避難行動に重大な支障をきたす恐れがあるため、時間差でエリアごとに分けて誘導を行いました。館内から、最終避難場所として設定した西が丘サッカー場駐車場に集まった参加者は、最終点呼を行い、同部屋のスタッフや同じフロアに勤務する同僚の逃げ遅れや怪我人の有無を確認しました。
訓練終了後は、北区役所及び赤羽消防署の協力のもと、起震車体験と消火器の模擬訓練を行いました。東日本大震災発生時に最も震度の大きかった地域の揺れを再現した起震車では、震度7の揺れを数秒間体験することができ、参加者は揺れの大きさに驚いていました。一方の消火器模擬訓練は、これまで火災訓練を何度か行ってきたこともあり、参加者のほとんどは、慣れた手つきで消火器を扱うことができました。
実施して分かった様々な課題
今回は初めて地震を想定した訓練ということで、想定する地震の規模や避難場所の設定など、赤羽消防署と協議しながら試行錯誤の中での訓練となりました。その結果、実施するまでは分からなかった様々なことが判明しました。利用者だけでなく常勤スタッフにも非常階段の場所が認知されていなかったり、全館放送のアナウンスが聞き取りにくく、避難開始のアナウンス前に避難を開始してしまったフロアがあったりと、全体的に統一された行動をとることができませんでした。こうした小さなほころびの一つ一つが、結果として重大な事故などを生むことになります。選手やコーチなど利用者をいかに迅速に安全な場所へ誘導するのかなど、今後のクリアすべき課題は少なくありません。
巨大地震は突然に、しかし確実に我々の足元を揺らします。今後30年間で、関東大震災クラスの地震が発生する確率は70%強とも言われています。日ごろから防災への意識を高く持ち、いつ何どき、地震に限らず、様々な災害が起きても冷静沈着な対応ができるように、これからも訓練を重ねていきたいと思います。
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