平成27年度 成長期における医・科学サポートプログラム
概要
個別サポートでは、女性ジュニアアスリート(9歳~18歳)のうち、オリンピック種目のNFから推薦のあった者を支援対象者として、運動器メディカルチェック、心理、栄養及びトレーニングの各分野のサポートを計測的に実施しました。
講習会では、女性ジュニアアスリートと保護者対象の講習会と、女性ジュニアアスリートの指導者対象の講習会をそれぞれ開催しました。
<各プログラムの概要>
1.個別サポートプログラム
2.女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会
3.女性ジュニアアスリート指導者講習会
個別サポートプログラム
実施内容
支援対象者14名のうち、平成26年度から継続の支援対象者(12名)については改めてヒアリングは行わずサポートを開始し、平成27年度からの新規支援対象者(2名)については、選手、指導者、保護者に対し、現状の状況や希望する支援内容等のヒアリングを行いました。
・運動器メディカルチェック+トレーニング
氷上系 1名 雪上系 1名
・心理
格闘技系 8名 標的系 2名
・全分野
(運動器メディカルチェック+トレーニング+心理+栄養)
審美系 2名
計 14名
【運動器メディカルチェック】
新規支援対象者2名に対し、ヒアリング及び運動器メディカルチェックを実施しました。トレーニングに支障をきたすような運動器の問題はないか、トレーニングを行う上で注意すべきポイントは何かを確認した結果、トレーニングで解決できる問題が抽出できました。その問題について、整形外科医よりトレーニング指導員へ申し送りを行い、トレーニング計画に生かせるよう連携をとりました。
【トレーニング】
アスリートや指導者、保護者へのヒアリング結果と運動器メディカルチェックの内容を元にトレーニングプログラムを作成し、トレーニングサポートを実施しました。
ヒアリングでは主に、今後の試合スケジュール、普段の練習スケジュール・内容、トレーニング実施歴・内容、トレーニングに対する要望を聞きました。
【心理】
心理サポート(心理カウンセリング、メンタルトレーニング)は面接の枠組み(決められた場所、時間、頻度)を大切にしながら、以下の手順で実施しました。
①支援対象者とコーチへのヒアリング(サポートに対する要望の聴取と確認)
②インテーク面接(支援対象者が抱えている問題の把握とそれに対してどのようなサポートを行えばよいか見通しを立てるための最初の面接)
③心理アセスメント(心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)、風景構成法(LMT)/それぞれ年2回実施)
④サポート担当者の決定(インテーク面接+心理アセスメントの情報を元にスタッフ間で相談し、担当者を決定した/JISS心理グループから3名が女性ジュニアアスリート個別サポートを担当)
⑤サポートの実施と振り返り(サポート実施中は、振り返りとしてケース検討会を行った)
【栄養】
ヒアリングで選手・保護者・指導者それぞれに栄養や食事に関する現状と課題を聞き取ったのち、栄養・食事摂取状況調査や身体組成測定などの栄養アセスメントを実施しました。ヒアリングやアセスメント結果から選手の問題点や課題を抽出し、サポート目標に基づいた栄養サポートを実施しました。選手の競技力向上を目的に、家庭での栄養食事摂取状況の改善、練習スケジュールや試合に合わせた捕食の摂り方や、ウェイトコントロールについてのアドバイスをしました。また、アスリート専用レストランで栄養評価システムを使用した食事選択実習や、電子メールを利用したサポートも実施しました。必要に応じて保護者への栄養サポートを実施し、家庭での食事改善や選手の食の自立を促しました。
得られた成果
個別サポートを実施して、各分野の女性ジュニアアスリートの問題点を抽出することができました。その問題点を講習会等の他の事業に反映し、間接的に知見を広げることが可能になりました。
また、各分野のスタッフが連携を取りながら情報共有し、サポートへ活かすことができました。これは支援対象者に対して効果的でした。
個別サポートで得られた主な問題点 |
・練習、試合、学校スケジュールとの調整 |
・ジュニア期におけるトレーニングの正しい理解と実践 |
・トレーニング環境が整っていない |
・体重、体脂肪の増加 |
・月経不順 |
・菓子類の摂取コントロール |
・保護者への反抗 |
・指導者との人間関係 |
・自立心が低い |
今後の課題
女性ジュニアアスリートのサポートには、各分野の専門スタッフが総合的にサポートを実施することで課題により深く取り組むことができると思いますが、JISSだけで全てを対応していくことは難しいので、各NF等も女性ジュニアアスリートへの支援をそれぞれ実施できるように、モデルプログラムを構築し普及していくことが更に必要になると思います。
女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会
実施内容
平成26年度と同様、婦人科、栄養、心理、トレーニングの各分野を、女性ジュニアアスリートとその保護者がともに実践を交えながら学ぶことにより、成長期におけるからだやこころの変化に家庭でも柔軟にかつ継続的に対応できる知識を身につけ、充実した競技生活へつなげることを目的とし、実施しました。
平成27年度は、中学生対象と高校生対象の2回に分けて実施し。また、本講習会のような知見提供の場が各地で広く展開されるよう、NF・都道府県体育協会のスタッフにも参加を呼びかけました。
講座プログラムは、平成26年度女性ジュニアアスリート及び保護者のための講習会プログラムに「保護者向けの個別質問会」を加えました。
得られた成果
女性ジュニアアスリートと保護者それぞれ分かれて講義や実践を行ったことでそれぞれの視点から知識や知見の普及が可能になりました。講習会後のアンケート結果からも、それぞれの視点から家庭や日常、競技生活を踏まえた感想があり高評価を得られました。
また、今回の講習会は各団体スタッフにも参加を呼びかけました。講義内容だけでなく、講義の形式や進め方、アスリートに対するアプローチ方法等、実現可能なプログラムの普及ができたと考えられます。
今後の課題
講習会の日程やスケジュール等、JISS側が全てを考慮していくにも限界があると感じました。今後、プログラムを普及して知見を発信していくと同時に、NFや各地方団体でも参加者を集められる時期やスケジュールで独自に講習会を開催できるように、考えていく必要があると思います。
女性ジュニアアスリート指導者講習会
実施内容
女性ジュニアアスリートの指導者を対象に、成長期に起こりやすい各種障害についての理解を深め効果的なサポート活動の実現を目的とし開催しました。また、平成25年度に作成した『成長期女性アスリート指導者のためのハンドブック』を活用し、関連性のある分野をまとめ焦点をしぼった内容のテーマで実施しました。
平成27年度は、6月と2月に開催し、平成26年度女性ジュニアアスリート指導者講習会プログラムに心理分野の講座に個別サポートで得た「事例紹介」を加えました。
得られた成果
平成27年度の講習会の中で、心理編では個別サポートの中で得た事例を、女性ジュニアアスリートの指導者へ直接普及することができました。
所属団体別参加者実績
所属団体 |
6月 |
12月 |
JOC及びJOC加盟競技団体 |
8人 |
15人 |
JOC加盟競技団体種目の地域協会 |
19人 |
11人 |
自治体、都道府県体育協会等 |
10人 |
11人 |
パラリンピック種目 |
1人 |
0人 |
学校関係者 |
27人 |
16人 |
アマチュアチーム、スクール |
21人 |
6人 |
地域のスポーツ医・科学センター |
4人 |
6人 |
民間企業スポーツチーム |
3人 |
4人 |
民間企業、その他 |
7人 |
13人 |
JISS内関係者 |
5人 |
4人 |
報道関係者 |
2人 |
1人 |
合計 |
107人 |
87人 |
また、6月に開催した講習会を撮影・編集をし、JISSホームページ上でストリーミング配信を実施しました。ストリーミング配信をしたことで、講習会に出席できなかった女性ジュニアアスリートを指導する指導者へ知識の普及ができました。
今後の課題
平成26年度、27年度と計4回の講習会を実施し、講習会後のアンケート結果から多くの参加者から高い評価を得られました。しかしこの結果は逆に、まだまだ広く指導者に基本的な知識が浸透していないことを示唆していると考えられます。ハンドブックやストリーミング配信をもっと広く周知し、多くの方に知見を提供していく必要があると考えると同時に、NFや各地方団体等に対して、ストリーミングやハンドブックを参考に講習会を独自で開催するように呼びかけていくことが必要だと思いました。
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