ホーム > 知る・学ぶ > スポーツ栄養 > サプリメントの危険性

サプリメントの危険性

  1. 特定の栄養素の過剰摂取による健康被害
  2. サプリメントと薬の飲み合わせ
  3. サプリメントへのドーピング禁止物質の混入の危険性
  4. サプリメントによる意図しないドーピングルール違反を防ぐために


特定の栄養素の過剰摂取による健康被害

 栄養素の中には、とり過ぎると健康被害を及ぼす成分があります。サプリメントには、摂取したい栄養素以外の成分が入っている場合があります。そのため、複数のサプリメントを併用している場合には、栄養素の過剰摂取のリスクが高くなります。図1に食事と複数のサプリメントを組み合わせて摂った場合のカルシウムの過剰摂取の危険性を示します。サプリメントを様々な目的(トレーニング後のたんぱく質補給、ビタミン・ミネラル不足の不安解消など)で複数摂取しているつもりが、実は全てのサプリメントにカルシウムが含まれており、食事とサプリメントからのカルシウム摂取量を足すと、結果的に耐容上限量に達しています。複数のサプリメントを摂取する場合には、ビタミンやミネラルなどの過剰摂取(表1)に注意しましょう。



筋肉をつけるためにトレーニング後はプロテインを飲まないと!ビタミンやミネラルが不足しているかもしれない。念のため飲んでおこう。


食事とサプリメントからのカルシウムの過剰摂取の例のグラフ

図1 食事とサプリメントからのカルシウムの過剰摂取の例



表1 ビタミン・ミネラルの過剰摂取による症状

ビタミン ミネラル
種類 症状 種類 症状
ビタミンA
脱毛
皮膚の剥離
カルシウム 泌尿器結石
ビタミンD
高カルシウム血症
軟組織の石灰化
鉄沈着症
ビタミンE 下痢など 亜鉛
胃腸の刺激
膵臓の異常等
ビタミンB6
神経障害
シュウ酸腎臓結石
肝臓・脳の機能障害
ナイアシン
皮膚発赤作用
消化管・肝臓障害
マグネシウム
軟便
下痢


サプリメントと薬の飲み合わせ

 食品と薬を一緒に摂取したとき、1+1=2といった単純な足し算だけでなく、お互いに影響を及ぼして薬の効果が増強したり減弱したりします。例えば、クレアチンの摂取で腎毒性の強い薬物との相互作用により、腎障害の悪化の可能性が指摘されています。そのため、医師により胃に食べ物がない起床時や食前、食後2時間など、薬を飲むタイミングが指定されるのです。病気や怪我の治療のために薬を飲んでいるアスリートは、医師・薬剤師に使用しているもしくは使用する予定のサプリメントを伝え、指示に従って活用しましょう



サプリメントへのドーピング禁止物質の混入の危険性

 サプリメントは食品であるため、医薬品のように含まれている成分が全て記載されているわけではありません。そのため、栄養成分表示や原材料表示には書かれていないドーピング禁止物質(以下、禁止物質)が含まれている可能性があります。さらに食品は、医薬品と比較して製品の品質管理レベルが低いため、同じ工場で複数の製品を製造している場合には、他の成分が混入してしまう可能性もあります。これらがサプリメントに禁止物質が混入する理由であり、絶対に禁止物質が含まれていないと保証できない原因です。実際に、2002年に国際オリンピック委員会の医事委員会によって行われた調査では、調査した634種類のサプリメントのうち94種類(14.8%)の製品に禁止物質が混入していたことが報告されています。実際に、表示されていない禁止物質が混入したサプリメント使用が原因のアンチ・ドーピング規則違反が国内のドーピング検査で複数件起きています。そのため、サプリメントを使用する前に確認すべき事項を確認し、どうしても必要な場合にのみ細心の注意を払ってサプリメントを利用することをお勧めします。



サプリメントによる意図しないドーピングルール違反を防ぐために

 サプリメントには禁止物質混入のリスクが付きまといます。一方で、サプリメントを利用しないと栄養素の不足に陥る、衛生環境の悪い地域へ遠征に行くなど、どうしてもサプリメントを利用しなければならない場合があります(参考:(2)ダイエタリーサプリメント)。また、高い競技レベルの選手において科学的根拠に基づいたパフォーマンス向上効果を期待してサプリメントを利用する場合((3)パフォーマンスサプリメント)には、意図しないアンチ・ドーピング規則違反を防ぐ最大限の努力が必要です。

 2019年3月に「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン(以下、ガイドラインと表記)」がサプリメント認証枠組み検証有識者会議から発表され、サプリメントによるドーピングリスクの低減と情報発信の枠組みが策定されました。このガイドラインの要件を満たしたサプリメントは、禁止物質の混入リスクが他の要件を満たしていない製品よりも低いと考えられます。


ガイドラインの要件(禁止物質の混入リスクが低いと考えられる)

  • 生産施設の審査が実施されている
  • 製品の分析が定期的に実施されている(年1回以上)
  • 生産施設審査の結果と製品の分析結果が公開されている
  • 公開された情報が基準に基づいて更新・削除されている
  • ※このガイドラインの枠組みでは認証マークは設けていない


     以下のリストに、民間のアンチ・ドーピング認証プログラムの例をお示しします。アンチ・ドーピング認証プログラムとは、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の禁止物質リストにある物質が製品、原材料、サプリメント、食品中に混入していないかを分析・検査・試験を行うプログラムです。ここではサプリメントの使用を推奨するものではありませんが、製品を選択する際の参考にしてください。ただし、これらの中にはガイドラインの要件を満たしていない認証マークもあること、また、禁止物質が入っていないことを100%保証するものではないことにご留意ください。

     また、アンチ・ドーピング認証は各製品に実施されるものであり、その製品を開発している企業を認証するプログラムではありません。したがって、ある製品ではアンチ・ドーピング認証のマークが付いていても、同社の他製品では実施されていない可能性があることに注意してください。

  • スポーツにおけるサプリメント製品情報公開の枠組みに関するガイドライン
  • 日本アンチ・ドーピング機構(JADA)サプリメント分析認証プログラム終了について


  • 民間のアンチ・ドーピング認証プログラムと認証マークの例

    認証マーク 認証機関
    (国名)
    認証マーク 認証機関
    (国名)
    インフォームドチョイスのホームページ

    LGC
    (イギリス)

    インフォームドスポーツのホームページ

    LGC
    (イギリス)

    ビーエスシージーのホームページ

    BSCG
    (アメリカ)

    エヌエスエフのホームページ

    NSF
    (アメリカ)

    ラボドーアのホームページ

    LABDOOR TESTED FOR SPORT
    (アメリカ)

    ハスタのホームページ

    HASTA
    (オーストラリア)

    コログネリストのホームペー

    COLOGNE LIST
    (ドイツ)

    ティーエスピーのホームページ

    TSP
    (日本)
    ※BSCGにて分析
    エフキューエスシーのホームページ

    FQSC
    (日本)



     利用してみようと考えているサプリメントがある場合、上記のような認証プログラムで検査された製品であるかを確認することで、禁止物質の混入リスクが低い製品であることを確認できます。また、上記にある認証マークがない製品について、認証マークはないが禁止物質が含まれていないと検査されている製品も存在します。一方、禁止物質が含まれている製品を照会しているサイトも存在します。特に、認証マークが付いていない製品の利用には下調べを入念に行い、場合によっては薬剤師や管理栄養士、医師に相談をしましょう。ただ、いかなる場合においても、ドーピングを100%回避することができる保証はありません。すべてのサプリメントに禁止物質が混入している可能性も想定し、購入したサプリメントごとに少量(小さじ1杯もしくは1錠程度)を袋やピルケースに入れて保管し、容器の賞味期限や製造ロット番号を記録もしくは写真で残しておき、万が一ドーピング検査で陽性になった場合に故意にアンチ・ドーピング規則違反をしていないことを自分で証明できるように準備しておくことも大切です。

    ページトップへ