妊娠期について

妊娠中の体重増加の目安はありますか

目安はいくつかの団体から提案されていて一定の見解はありませんが、妊娠前のBMIにより異なっています。令和3年3月厚生労働省は「妊産婦のための食生活指針」を改定し、「妊娠中の体重増加の目安」(日本産科婦人科学会)を参考として次のように提示しています。

■妊娠中の体重増加の目安(※1)

妊娠前の体格(※2)
BMI kg/m2
 体重増加量の目安
 低体重(やせ)  18.5未満 12~15 kg 
普通体重
18.5以上25未満
 10~13 kg
肥満(1度)
25以上30未満
 7~10 kg
肥満(2度以上)
30以上
 個別対応
(上限5㎏までが目安)
※出典:厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なかだらづくりを~」(令和3年3月)
※1 「増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し、個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける」産婦人科診療ガイドライン編 2020 CQ 010より
※2 体格分類は日本肥満学会の肥満度分類に準じた

妊娠中、体重を増やしすぎあるいは減らしすぎた場合、胎児や母体に与える影響はありますか

妊娠前のBMIと関連しますが、妊娠前BMIの低いやせている妊婦が体重増加の少ない場合、切迫早産や早産、生まれてくる赤ちゃんの体重が少ないことなどが生じる可能性があると言われています。妊娠前BMIの高い肥満の妊婦は妊娠中血圧が上がったり、糖尿病になるリスクが高くなると言われています。 妊娠前にBMIが標準であった場合の体重増加は、赤ちゃんの発育と母体の健康のために、増えすぎることも少なすぎることもなく適正な体重増加を目安にし、バランスのとれた栄養素を摂取することが大切です。

トレーニングを実施する上で気をつけたいことはありますか

かかりつけの妊婦健診を行っている施設で妊娠経過に問題ないことが前提です。 JISSでは子宮収縮が起こりにくいとされている午前10時から午後2時を目安にトレーニングをしています。臨床スポーツ医学学会から出ている妊婦スポーツの安全管理基準を参考にしてください。

トレーニング時の水分補給はどうすればいいですか

妊娠中は代謝が妊娠前よりあがっているので発汗量が増えます。また運動による急激、かつ過度な体温上昇は胎児にも母体にも影響を与えるため運動中は水分補給を行い、過度な体温上昇を防ぐようにしましょう。水やスポーツドリンク(過度な摂取は糖分が多いので注意)などを摂取します。

お腹が大きくなったときのトレーニングで気をつけることはありますか

仰臥位低血圧症候群

仰向けで寝転がると、胎児の重さで血管を圧迫してしまい、低血圧が起こりやすくなります。特に、妊娠16週目以降は注意が必要です。低血圧になってしまったときは、左を下にすると血管の圧迫を緩めることができます。

妊娠中のトレーニング図


切迫早産と早産の違いはありますか

早産にすすむ可能性がある状態を切迫早産といいます。37週以前に分娩することを早産といいます。切迫早産といわれたら、安静が必要なためトレーニングは中止し産科の主治医の指示に従いましょう。

妊娠中はなぜ貧血になりやすいですか

妊娠中は胎盤を通して赤ちゃんに鉄が運ばれたり、体の中の血液量が増え血が薄まるため貧血になる人が多くなります。これを妊娠性貧血といいます。女性はもともと貧血の人が多いので妊娠中に鉄欠乏性貧血といわれたら、食事で鉄を多くとると共に鉄剤の内服等の治療をしましょう。

妊娠中の貧血のメカニズム

1、妊娠 2、血液量が増加する 3、胎児に優先して鉄が供給される 4、赤血球の生産が追いつかなくなる 5、鉄欠乏性貧血になりやすい

貧血の自覚症状はありますか

運動能力の低下につながるため、アスリートは貧血の予防が重要になります。

こんな症状に注意!

  • なんとなくだるい
  • 息切れがする
  • 時々フラッとする
  • 立ちくらみ
  • 疲れやすい、など

妊娠中のアスリートが注意したい栄養素・食品は何ですか

「葉酸」は特に妊娠初期の胎児の発育に重要な栄養素なため積極的にとってください。 緑黄色野菜に含まれます。
「タンパク質」はアスリートの筋量低下を防ぎ、妊娠中期から末期にかけて蓄積量が倍増するので不足のないようにします。肉・魚介類・大豆や乳製品に多く含まれます。
「鉄」は妊婦の循環血液量の増加、胎児の成長、胎盤中への鉄の貯蔵などで、特に妊娠中期以降必要量が多くなります。赤身の肉・赤身の魚・大豆に多く含まれています。
1日1回は緑黄色野菜のおかずを摂り、主食+主菜+副菜+汁物+果物+乳製品が毎食そろうようにこころがけます。

つわり時期のアスリートにおすすめ料理は何ですか

つわり症状があり、食欲がなく、体重が落ちている場合は栄養バランスよりも食べや すいものを食べられるときに食べます。急激な体重減少は筋量低下につながりやすいため、エネルギー確保を優先に、少量でもエネルギー量が高いものを選びます。
温かい料理より、冷たい料理の方が、香りを抑えられ食べやすいです。1品で少量でも必要なエネルギーや栄養素「炭水化物」「タンパク質」「葉酸」「鉄」が補えるものがおすすめです。
血糖値が低いときはつわり症状が強く出る場合がありますので、血糖値が低くならないように少量でも吐かない範囲で食べましょう。

【おすすめレシピ】

  1. あさりとチンゲンサイのペペロンチーノ
  2. 変わりいなりずし

妊娠中のアスリートにおすすめおやつは何ですか

アスリートは妊娠中のトレーニング量が減るため、エネルギー必要量の調整が難しく、ウェイトコントロールが重要になってきます。食事が乱れ、間食量が増えてしまう事も多くあります。急激な体重の減少や増加を避けるため、食べ過ぎには注意しながらおやつを上手に取り入れます。
1日合計200kcal程度までを目安にして、「カルシウム」「鉄」などの不足しがちな栄養素が補えるものを選びます。栄養素が補えるおやつは、子どもの間食にもおすすめです。

【おすすめレシピ】

  1. フローズンヨーグルト
  2. ミックスジュース
  3. ミルクゼリー黒糖がけ

妊娠中の相談はどこでできますか

アスリートの妊娠・出産期をどのようにサポートしていくかは、みなが試行錯誤しながら実施しています。妊娠・出産を機に、競技から離れるという選択肢だけではなく、どのような工夫をすれば競技を続けていけるのか、競技を続けるにはどのようなサポートが必要か、関係者で話し合いながら進めていきましょう。妊娠・出産期のアスリートの悩み事は、女性アスリート支援プログラム(女性アスリートのネットワーク支援プログラム・女性アスリート相談窓口)やJISS心理グループでも相談を受付けています。詳しくはJISSのHPをご確認下さい。 (JISS心理グループより)

  1. 女性アスリート支援プログラム
  2. メディカルセンター 女性アスリート相談窓口
  3. 心理グループ

産前はいつまでトレーニングをしていましたか

※ここに示したのはアスリートの経験談であり、このトレーニングを推奨するものではありません。実際に妊娠期や産後のトレーニングを行う場合は、医師や専門家の指導の下で行うようにしましょう。

荒木絵里香さん(バレーボール)の場合

8ヶ月くらいまで行った。

兼松由香さん(7人制ラグビー)の場合

ラグビーの練習は7ヶ月くらいまで行った。

千葉麻美さん(陸上競技)の場合

出産一週間前まで継続して行った。

本橋麻里さん(カーリング)の場合

出産前日までジムに行ってトレーニングしていた。

産前は具体的にどのようなトレーニングを行いましたか

※ここに示したのはアスリートの経験談であり、このトレーニングを推奨するものではありません。実際に妊娠期や産後のトレーニングを行う場合は、医師や専門家の指導の下で行うようにしましょう。

荒木絵里香さん(バレーボール)の場合

トレーナーに作成してもらったトレーニングメニューと有酸素運動を実施

知人から紹介してもらったトレーナーに、臀部と股関節周辺の簡単なトレーニングメニューを作成してもらい、自宅やジムで実施した。メニューは主に臀部のトレーニングが多く、寝ながらやったり、チューブを使って行う強度としては軽いものだった。また、週3日30~40分ほどのウォーキング、スイム、バイクやステップマシンなどの有酸素運動を行なった。

兼松由香さん(7人制ラグビー)の場合

マタニティービクスとタッチフットを実施

マタニティービクスを実施した。また、7ヶ月までタックルのないラグビー(タッチフット)をチームメイトと一緒にやっていた。

千葉麻美さん(陸上短距離)の場合

産婦人科医師・監督との相談の元、妊娠期間全般でトレーニングを実施

心拍数160拍程度のトレーニングを実施。安定期に入るまでは軽い負荷のチューブトレーニング程度を行い、本格的なトレーニングは安定期に入る妊娠5ヶ月位から出産一週間前まで継続して行った。毎日、自分の体調を細かく監督に伝え、その日の体調に合わせたメニューを行っていたが、時にはウォーミングアップのジョグで心拍数が160拍を超えてしまう日もあり、体調の変動に合わせて臨機応変に対応することもあった。
妊娠後期は、お腹が大きくて走ること自体が困難になってきたため、水中トレーニングに切り替えるなど工夫してトレーニングした。

本橋麻里さん(カーリング)の場合

陸上トレーニングと氷上トレーニングを実施

妊娠初期の筋力トレーニングは、やや強めの強度で行った。お腹が出始めて、骨盤が動き始めたと実感した妊娠5・6ヶ月くらいからは、安産に向けてのトレーニングに切り替えた。後期は、インナーマッスルを意識しながら呼吸をするメニューを多く行った。定期的に行っていたウォーキングでは、心拍数は測らなかったが、歩く時間は設定していた。 9ヶ月まではチーム練習で氷上に乗っていた。

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